ヒサカキの謎 ー芝大神宮と増上寺の旅ー

謎が好きなようだ、と言ったことで
謎を無理に探そうと、かえって自分を縛ることになってきたので、
謎がるのもこれでいったん打ち止めにしようと思う。

今日はヒサカキの謎である。姫榊とも書く。

うちの裏庭にはヒサカキが植わっていて、ちょうどこの時分、花が咲く。

庭仕事をしていると、なにやら強烈な、でも懐かしいような香りがするとそれがヒサカキの花で、

なんだっけ、これ、そうだ、たくわんだ、と思い当たると、もうたくわんにしか思えない。

緑の葉の陰にびっしりと鈴のような花を咲かせる。

ちょっと見には気づかないほどの小ささで、
外観と香りがそぐわず、
当初、このかそけき花がこれほどの強烈なにおいを発するとは信じられなかった。

ヒサカキについてよく言われるのが、
サカキ(榊)は、関東以西の温暖な地域でしか育たず、
関東以北ではその代わりとしてヒサカキ(姫榊)が神事に用いられる、という話である。

ふむ。ならば、この時期、東北の神社では、たくわんの匂いでいっぱいなのであろうか。

嫌いな向きもいるようだから、ヒサカキの森ともなれば、それはそれは大変なことであろう。

ハハ、冗談、じょうだん。


さて、過日、新しいことを始めようと思い、芝大神宮へ行った。

芝大神宮
https://www.shibadaijingu.com/

参拝を終え、東京十社巡りのミニ絵馬を求めた。

東京十社巡りはこちら。

東京メトロ24時間券でいく「東京十社めぐり」

ベンチで一休みしていると、お、これは! あの匂いではないか! 

背後から香ってくるのはまさしくたくわんの香り。

振り向くと、おお、やはりあった。

白い花がうつむいている。

ならば、芝大神宮は、ヒサカキの森なのか。

これがほんとの冗談から駒か、などと思ってよく見てみると、

手水舎の後ろにはサカキもヒサカキもあるのだった。

 

それに第一、ヒサカキばかり植わってはいない。

椿も桜も植わっている。

ヒサカキの森などと心配することはなかった。

だが、関東以西でしかサカキは育たないとか、関東以北ではヒサカキが用いられるとか、
いろいろ言われているが、
この際、本当のところを調べてみようと思った。


そして、それはあっけなくわかった。

森林総合研究所

サカキの分布図
https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/prdb/sakaki.html

ヒサカキの分布図
https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/prdb/hisakaki.html

予想に反して、さほど明確には南北が分かれてはいなかった。

それどころか、そもそも、ヒサカキも北陸、中部、東北の内陸には見られない。

寒さに弱いのだろう。

じゃあ東北の神社では何を神事に使うのかしらん、
という謎は私の手に負えなそうなので、そっとしておく。

亡父の墓は神道なので正しくは奥津城といい、
墓石の後ろにうちのヒサカキの挿し木がうまく根付いたので、
今年はサカキも植えるつもりである。

大きく育てば、奥津城参りに使えそうだ。


その後、増上寺に向かう。

増上寺
https://www.zojoji.or.jp/

大殿で焼香をする。

椅子が並べられていて、それへ坐る。
磨き上げらえた黒い床と金色の本尊を見ていると、
焼香のよい香りがただよってきて、
ずっとここにいたくなるような心持ちに。

ここはいいところだなあ、また来よう。


増上寺の隣りには都立芝公園がある。このあたりは空が広いなあ。

開花はまだだが、ピクニックしている人がたくさん。

花はなくとも、天気がいいほうがいいものね。

花見客を横目に見ながら、都内最大級の前方後円墳「芝丸山古墳」に着く。

そばに、突如、大きな虎の像が。

うっわ、かっこいい、寅年だから、虎は好き。

広場には稲荷神社があり、「増上寺の裏鬼門にあたる芝丸山古墳にあり」という文言を見、

あれは裏鬼門を守る、白虎ではあるまいか。

お、初桜発見! 開花日よりも前だったので、特にうれしい。


帰りがけ、新橋の「香川・愛媛せとうち旬彩館」に寄る。

みきゃんの靴下を探すも、みきゃんはなかったが、こみきゃんの靴下を発見。

見た目が小さくスタイの隣りにあったので子ども用かと疑ったが、ちゃんと大人用だった。

先日、道後温泉のどこかで買おうと思っていたが、案外に夜が早い町で、
夕食を食べているうちに軒並み土産物屋が閉店してしまい、涙を飲んだのだ。

ほくほくと帰途についた。

道後温泉旅行はこちら。すっかりみきゃんのファンに。

夢の蛇口みきゃんジュースー新春道後温泉旅行(12)

サワーポメロのマーマレード

食卓に甘き霧立つ志布志よりのサワーポメロにナイフを当つる
 嘉代子『飛鳥』より

志布志はしぶしと読む、父の出身地。

父の古い友人から今年も届いた、

鹿児島ではサワーポメロ、宮崎ではパール柑。

見た目はすっぱそう。食べるとそうでもない、うん甘い。

ツブツブしてて食べやすい、

プチュっと飛んだりしない。

さっぱりしていてサラダにも。

めずらしいものだもの、

せっかくだからマーマレード作ろうよ。

ちなみにジャムは果肉を煮たもの、

マーマレードは皮も入ってるやつのこと。

みんな知ってると思うけど

一応ね。

今回は皮だけで作る。実は食べちゃったんだもん。

うまくできるかしら。

 

皮を2ミリ厚で切る。白いとこはつけたまま。

水に一晩つけて おやすみ、また明日。

水で洗うと黄色い水が出る。

これがアク。

あんまり洗いすぎちゃって 味まで抜けたらどうしよう。

3度洗ったら、お鍋で煮る。

 

梅で作ったときはきび砂糖にしたら、ずいぶん色がついたから

今回はこの薄い色をそのままにしたくてグラニュー糖にした。

種を袋にいれて一緒に

コトコト煮る。

ちょっと目を離したら

わああ

焦げそうだ。

まだまだだねえ 追加で水を足す。

水がなくなってきたら、出来上がり。

果肉がないからトロトロしてないねえ。

こりゃ種入れなくても変わらなかったかもな。次はいれなくてもいいか。

甘みが控えめで美味しいねえ。

あんなに水で洗っちゃったのにちゃんと味がするよ。

双六の謎 ー 岩槻の旅・続 ー


岩槻人形博物館「紫壇象牙細工蒔絵雛道具」

https://ningyo-muse.jp/modules/collection/index.php?action=PageView&page_id=7&filenum=zoomify01

「かわいいなあ、ちゃんと将棋の駒もあるよ」などとのんきにミニチュアの精巧さを愛でていたが、

そこで謎の物体を見つけるのである。

雛道具で、三面揃というのがある、
双六盤、碁盤、将棋盤の三つをいう、とある。

ふむ。

将棋と囲碁はわかる、これとこれだ。

じゃあ、残りのこれが、双六盤ってことになるが・・・?

なんかチガウ。これナンダ?

あの黒い枠はなんだ?

上に乗ってるのは、亀の甲羅にも見えるし、酒の入った革袋のようにも見えるし、鐘のようにも見える。

よほど小さく、展示ケースに頭を近づけ、目を細めてみても、何やらわからぬ。

とにかく、見たことがないものだということはわかった。

私の知っている双六は、マス目に絵が描いてあって、
さいころを振って出た目の数だけ駒を進めて、上がりを競うやつだ。
一回休み、とかあって。

それなのに、これはなんだなんだ、へんだへんだ、なんだあれは、と思ったが、

まあ、いいや、と特に調べることもなく、日々を過ごしていた。


そんなこんなで1年ほど経った頃だ。

アッと思ったのが、NHK大河『光る君へ』である。
ちょっと待った! 今のシーン!

指をさして大きな声を上げた。

なんと、左大臣と倫子が部屋でアレをやっているではないか!

なるほど、あの筒にさいころを入れて、振るのだな、

あんな感じに白と黒の駒を置くのか!
これが双六かあああああ!!!

食い入るように見、何度も巻き戻した。

ははあ、あの謎の物体は袋で、さいころと駒が入っていたのだな、とわかった。

頭の中の引き出しで眠っていた謎が、音を立てて躍り出してきた夜だった。

国会図書館によれば、盤双六は絵双六とは別の遊びで、
5~6世紀ごろから流行したが江戸時代には廃れた、とある。

今回は、ワトソンではなく、ちゃんと謎が解けたぞ。

もっと詳しく知りたいシャーロックはこちらを。
◎国会図書館>本の万華鏡第12回 紙の上の旅・人・風俗-江戸の双六(すごろく)-
https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/12/

◎大阪電気通信大学 木子研究室 「古代盤上遊戯」
https://www.osakac.ac.jp/labs/kishi/yuugi.html

◎和樂web

ゴールは玉の輿?江戸時代の女性向け「すごろく」遊び方や用語を徹底紹介!

犬筥(いぬばこ)の謎 - 岩槻の旅

謎、というのが私は好きみたいだ。

その割に、自分はワトソンなので、全然解決しないのだけどね。


今回の謎は、犬筥(いぬばこ)についてである。

こないだ、さいたま市岩槻の人形博物館で展示を観ていて、ふと思った、
犬筥って以前は普通に雛段にあったお道具らしいけど、
最近、見かけないよね。

正直、私は展示を観るまで知らなかった。

犬筥とは、安産、多産の象徴である犬の形をした張子の箱。

単体としても飾られたが、雛人形とともに飾られることも多かったようだ。

岩槻人形博物館
https://ningyo-muse.jp/


男雛、女雛の膝元に、かわいいのがちょこんといる。あれが犬筥である。

日本で初めて人形にサインを入れた
久保佐四郎によるミニチュア雛「御部屋雛」(明治~大正時代)にも、

野口光彦による「稚児雛十五人揃」(昭和時代初期)にも、

東京日本橋の豪商でコレクターの天野家雛段(大正時代~昭和時代)にも、

犬筥はあった。

だが、東玉大正館で展示してあった「木目込人形十五人揃」(昭和中期)には、ない。

東玉大正館
https://www.city.saitama.lg.jp/004/005/006/001/016/p005876.html

私が持っている雛は、高度成長期に流行った典型的な7段飾りだけど、やはり犬筥はない。

一方、左近の桜と右近の橘はある。

このようなセット売りは、デパートが発案したものとされている。

そのときに採用されたか否かが分岐点になり、
このセットが多く流通する中で、犬筥はなくなってしまったのかもしれない。

流行から外れ、いつのまにか忘れられそうになっているこの犬筥、
華やかな吉祥文様が縁起がよく、
よく見ると表情もいろいろで、かわいい。

友人は、犬筥ばかりコレクションしている。


天野家の犬筥

久保佐四郎による犬筥、こんな小さなミニチュアにも。

野口光彦による稚児雛の犬筥。

人形博物館の目玉、西澤笛畝コレクションの犬筥、は今回は展示されず。

だが、小さいのは単体で展示されていた。

それでうちでは、犬筥がない代わりに犬筥の屏風を作って飾ったのだ。

 

詳しい話はこちら。

母娘3人、みんなの雛祭り

3番線ホームの謎と団体臨時列車 相撲列車とサンタ電車 ― 両国の旅(続)

先日、両国の旅について投稿をしたあと、ちょっと気になったことがいくつかあった。

デザインマンホールに登場する「ハッキヨイ!せきトリくん」とはいったい?

調べると、日本相撲協会のキャラクターらしい。

巡業レポートをしたり相撲部屋を訪問したりしている。

日本相撲協会TOP  > ハッキヨイ!せきトリくん

まんがもある。ひよの山という新弟子が、上京し初土俵を経て勝ったり負けたりする成長物語。
相撲用語の解説もあって、おもしろい。

ちょっとといいつつ、全436話読んでしまった。

まんがハッキョイ!せきトリくん
https://www.sumo.or.jp/SekitorikunComic/index

その中に、気になるセリフが。

「昔は、相撲列車なんてのも、あったんだぞ。」と先輩力士が主人公の新人力士に言う。

欄外の解説には

「巡業などで力士の移動のために仕立てられる臨時列車の事。現在でも全車両を貸し切りにする場合にいう。」

とある。(88話

なに! もしや、これが、両国駅の3番線ホームの謎では・・・?


先日の投稿で、

両国駅の3番線臨時ホームについて、これは何のためのホームか詳細不明と書いた。
投稿後、気になったことの2つ目がこれだった。

あのホームは、その「相撲列車」の発着に使われているのではないか?

お相撲さんたちが両国に集合して、どやどやと電車に乗り込んで全国に巡業にいく、考えるだけでも楽しい。

昨年末私は、サンタの扮装で列車を貸し切って仕立てた「サンタ電車」に乗った。

その日、14時43分三軒茶屋発の東急世田谷線はサンタクロースで満載で、
目に鮮やかな赤と白の衣装に、
街ゆく人は驚くやら、手を振るやら、非日常の出現に笑いだす人も。

それの力士版だ。そりゃ、壮観だろうなあ。


さて、とにもかくにも「相撲列車」なるものがあるのがわかった。

本があった。『大相撲と鉄道 きっぷも座席も行司が仕切る!?』(交通新聞社 2021年)

https://www.kotsu.co.jp/products/details/601158.html
現役行司の書いたこの本で、はたして、両国駅の謎は解決するのか?

頁を開くとさっそくあった「第一章 相撲列車は、こんな列車だ」

相撲列車について詳しく書いてある(P.31~)。
各鉄道会社の規則規定にのっとり、日本相撲協会が団体券を使って利用する団体列車で、
全車両を貸切る団体臨時列車や一部貸切も含む・・・といってよさそう。本当はもっと細かい。

読み進めると、ついにあった、両国駅の3番線ホーム。

「(前略)1・2番線のホームが総武線各駅停車、
3番線が自転車&サイクリスト専用のB.B.BASEなど臨時列車の発着ホームとして
使用されています」と、駅長が教えてくれました。(P.176

もともと、両国駅は旅客、貨物ともに輸送の拠点として巨大な駅だったが、時代とともに縮小し、
3番線ホームは、平成22年、新聞輸送列車を最後に、定期列車の発着はなくなったとある。(P.185)

※B.B.BASEは、両国駅と千葉県房総半島を結ぶ、自転車を解体せずに持ち込める列車
正式名称「BOSO BICYCLE BASE」

私は、大阪、名古屋、福岡へあるいは地方巡業に行くのに、
両国から相撲列車を仕立て、総武線の線路を使って
東京駅までみんなで乗っていったのかなと思っていたのだが、
3番線ホームが相撲列車に使われたかどうかについては言及がなかった。
現在、相撲列車としては、年6本の東京発着の新幹線のほか、地方巡業でいくつか、とある。

部屋も各地にあるから、両国に集まらないで、東京駅集合なのかもしれない。

だから、3番線ホームへ向かうあの赤いカーペットについても謎のままだ。


余談だが、団体列車について、わかったことがある。

JRによる団体の種別中に、相撲協会団体と並んで遺族団体という表記がある。

団体<普通団体<特殊取扱団体<特殊団体<自衛隊団体、在日米軍団体、相撲協会団体、
新規学卒就職団体、遺族団体(P.114の表より)

亡くなった私の祖父は某県日本遺族会の会長を務めていて、
駅長と相談しにいった、とよく母が話していたが、
そういうことだったかと得心がいった。

著者の木村銀次郎さんのように、手配に奔走していたのだろう。

子ども時代は知らなかった祖父の仕事ぶりを、この本によって垣間見ることができた。


昨年末、サンタの扮装で列車を貸し切って仕立てた「サンタ電車」に乗り込んだが、
あれがつまり団体臨時列車だったわけだ。

実際に乗った側として思ったことを書こう。

世田谷線は、三軒茶屋駅と下高井戸駅を結ぶ東急線の鉄道。
サンタ電車は、さっきのJRの規定で言うと「団体臨時列車」ということになる。
同一団体が、全車両ごと貸切って、通常ダイヤ以外に運行する列車である。
貸切にかかる費用は、みんなで出し合えば十分可能な額。

もちろん、何でも貸し切れるわけではないが、
代表者によるとチャリティ活動ということで可能になったそうだ。

三茶駅前で募金を呼び掛けている様子。

通常、三茶駅の、西太子堂方向向かって左側が、乗るホーム。

だけど、臨時列車なので、特別に右の扉が開き、右のホームから乗るように指示された。

というのも、普通のお客さんが間違って乗っちゃうといけないから。

団体利用なので、SUICAもきっぷも使わない。これも相撲列車と同じ。


いよいよ入線してきた、招き猫のラッピング列車を用意してくれたというのがうれしい。


通常の時刻表では、下高井戸方面へは、14:42 の次は14:48発。
その間の14:43に我々の団体臨時列車は発車するダイヤになっていた。

さあ、出発だ。サンタたちは、次々に乗り込んでいく。

向かいのホームのお客さんたちは、
サンタだらけの2両の列車が停車しているものだから、目を丸くして見ている。

それへ私たちは車窓越しににこやかに手を振る。

列車は、三軒茶屋駅を発車し、終点の下高井戸駅まで行き、三茶まで戻る。

この往復の間、扉はいっさい開かず、運行する。

やはり普通のお客さんが間違って乗っちゃうといけないからね。

それで、途中駅では、扉は開かないが、停車はする。
乗ろうとホームで待っているお客さんは、

突如、サンタで満載の列車が到着して一瞬、戸惑う。

ベンチに座っていたおばあちゃんが笑いどおしなので、私たちも大いにうれしい。

東急線の線路上で作業している職員さんも手を振ってくれる。
私たちは歌を歌ったり鈴を振ったりする。

およそ14:43~15:24の1時間、サンタ電車は、非日常を提供した。

団臨の相撲列車も、たぶん、こんなふうじゃないかと思う。

駅では停車はしても扉は開かず、ホームの人を驚かし、笑顔で手を振って。


ほんとのおまけのおまけ。

『やっぱり猫が好き』で、相撲部屋が恩田3姉妹の家の上階に引っ越してきた、という話がある。

相撲部屋の名前は「トリカゴ部屋」で、登場する若い力士の四股名は「若雀」。

「せきトリくん」と聞いたときに、あれを思い出したが、関取と鳥のダジャレなんだね。

「やっぱり猫が好きVol.8」(ポニーキャニオン)
https://www.ponycanyon.co.jp/visual/PCBC000050249

毛糸とアンティークカフェの旅@両国、のはずがマンホール旅に

できるだけ週1回は投稿しよう。


妹が、両国に行かないかと誘ってきた。

初場所も終わったのに、ナニしに?

毛糸カフェがあるらしいんだ。

ずっと行きたかったけど、コロナで行けなかった。

ええー、行きたい、行きたい。

私は、コロナ禍を機にオンラインの編み物クラブに参加するようになった。

半年前にその展覧会が都立中央図書館で開催され、雑誌「毛糸だま」にその様子が掲載された。

『毛糸だま 2024年秋号 vol.203』(日本ヴォーグ社)
「ニットレポート フィンランドセンター グラニースクエア・プロジェクト」(76ページ)
https://nihonvogue.com/book/detail.html?id=2655&c=knit&d=07

プロジェクトと展覧会のことは、ここでも書いた。

フィンランドセンター編み物クラブによる「グラニースクエアプロジェクト」が東京都立中央図書館内で展示されます

展示観てきました! 私たちの編み物クラブによる「グラニースクエアプロジェクト」

それで、編み物にはとても興味がある。

アンティーク家具のある喫茶店では、毛糸も売っている、
毛糸メーカーが直営しているらしい。

あれ、KNITlaboの会社だね、編み物の基礎の記事は役立つのでよく見ている。

じゃあ、ランチに合わせて、両国駅に11時半に待ち合わせよう。オッケイ。


ところがその日、電車が事故でまったく動かず、
別の線を使ってなんとか両国にたどり着いたころには、
2人ともすっかり疲れてきってしまっていた。

それで、両国駅前に降り立ったら、目の前にちゃんこ屋さんのおいしそうな看板が。

あ、聞いたことある店だ、と妹が言う。

え、そうなの?

ランチメニュー、1人前1380円。いいじゃないか。

というわけで、ふらふらぁっと、吸い込まれるように入ってしまったのだ。

鶏と海鮮のちゃんこ鍋を食べているうちに、元気になってきた。

だけど、おなか一杯だよ。カフェどうする?

すると妹が目を輝かせて言う、じゃあさ、せっかくだから、マンホール探す?


妹は、マンホールカードとマンホールの写真のコレクションをしている。蓋活(ふたかつ)というらしい。

マンホールは各区が管理しているもので、区役所のウェブサイトに詳しいことが載っている。

調べると、墨田区のデザインマンホールは3つで、どれも両国駅の周辺にあるという。

これは珍しいことらしい。

北区なんて3つとも全然違う駅にあったし、
港区のセーラームーンは7つ集めるのに三田から麻布までずっと歩いたんだ、
と 妹は鼻息荒く話してくる。

あ、そう。私はまったく興味がないが、つきあうことにした。腹ごなしに歩いてみるか。


墨田区のウェブサイトには、マンホールの「住所」が掲載されている。

「住所」といっても、マンホールだ、特殊な表記になっている。

たとえば、こんなふう。

墨田区亀沢二丁目7番先
緑町公園沿い西側歩道上

なるほど。先、で、歩道の上、ね。

墨田区デザインマンホールについて
https://www.city.sumida.lg.jp/bunka_kanko/annnai/designmanhole-sumida.html

グーグルマップを使えば、すぐにわかりそうだ。

と思ったのが思わぬトラップ、これが思ったようではなかったのだ。

膨れたおなかをさすりながら、歩いていく。

マップではこの辺だがなあ。

うろうろするも、いつのまにか遠ざかってしまっている。

そうなのだ、住所じゃないのでピンポイントではないし、
このお店の隣りというような目印もなく、
地面に埋め込まれているから見つけにくい。

マンホールの写真に写り込んだ、道路の模様やら桟やらでアタリをつけていく。

この道ではないと思う、模様が違う。じゃあ、反対側かな。

妹はさすがに目ざとく、あ、あった、と先の地面を指さして小走りに走っていく。

なんでわかったんだよ?

きらっと光ったからね、とベテランの弁。

まずは、両国国技館のそばに、「ハッキヨイ!せきトリくん」

国技館の地下1階に整形外科があって「一般診療可」って書いてあるのが笑った。

お相撲さんじゃなくてもいいよってことか。

この看板のちょうど前に、デザインマンホールあるよ! っていうのは、マニアックな情報提供だね。

葛飾北斎 冨嶽三十六景 「神奈川沖浪裏」・・・すみだ北斎美術館のそばで発見。

すみだ北斎美術館のミュージアムショップは、インバウンド客がたくさん。

葛飾北斎 冨嶽三十六景 「凱風快晴」・・・回向院のそばで発見。回向院と言えば江戸だね。

そばに、霧島関のお店も。

鹿児島県姶良郡出身、と聞くや、それだけでうちはみな色めきだって応援していた。

マンホールカードをもらいに駅隣りの観光案内所に行く。

なんと外貨両替機があって、奥には土俵があり、江戸っぽい飲食店が並んでいる。

ここだけで、江戸の雰囲気満点。

両国は、北斎と相撲で外国人客に人気だということがよくわかった。


デザインマンホールの3つ目を写真に収めると、
カフェに行くにはちょうどいいころ合いになっている。

やっときた、「アンティークカフェ ウール倶楽部」
https://www.knitlabo.jp/antique-cafe-woolclub

ほんとはこっちが本命だった。

入り口におっきい毛糸玉と編み針のオブジェがあるよ。わくわくするな!

ふわあ、すっごくいいカフェだね!

毛糸のサンプルが壁一面にあるよ。 毛糸とキットも売ってる。

 

まずはケーキセット頼もうか。

待っている間にも、店内を見回す。

店員さんもみな、上質のセーターを着ている。

お隣りのお客さんもきれいな色のショール巻いてるね。

私も手編みの靴下履いてきたよ。

そんな話をしているうちに、珈琲が来た。

リモージュで飲むコーヒー最高。ケーキもすっごくおいしい。

きれいなものを見るのはいいなあ。

特別にオフィスの廊下の絵も見せてもらった。

ゴッホの「夜のカフェ」と「星月夜」の模写かと思ったら、
毛糸を貼りつけて作ってあるのだった。


両国の駅には、幅が広い自動改札口がある。

大きい荷物の方と書いてるけど、ほんとはお相撲さん用かな、ふふ。私も通ってみた。

駅の中に、歴代横綱の巨大な写真が飾ってある。

その先に、不思議な空間が。

赤いカーペットがずっと敷かれていて、その先に臨時ホームがあるという。

― これなんなんだろうね。

ー 普段は使われないホームって、原宿駅みたいだね。

― じゃあ、天覧相撲のときとか?

― なんで電車で来るのさ? 車で来たほうがいいだろよ。

― いや、ほら、こないだ大統領が来たじゃない。

― それこそ、車のほうが警備しやすいだろよ。

詳細不明ながら、3番線臨時ホームというのがあって、
それへ向かう長い長い廊下の真ん中あたりに、ストリートピアノが置いてあった。

おじいさんが一本指で曲を弾いていた。

ここいいなあ。私もいつか弾きに来たい。

先は行き止まりで、
普段は人が通らないから、 煩わしいことがなさそうだし、
廊下で音が響きそうだ。

何より、レッドカーペットがいいじゃな~い!

号外NET 墨田区
「【墨田区】すでに話題になっています!両国駅改札内、両国駅ステーションギャラリーに駅ピアノが設置されました。」
https://sumida.goguynet.jp/2021/03/27/ryogoku-streetpiano/

母娘3人、みんなの雛祭り

昨年の今ごろ、岩槻人形博物館に行った。

岩槻人形博物館 https://ningyo-muse.jp/

展示の中で、「天野家のお雛様」に非常に魅かれた。

ヘチマコロンで財を築いた商家の天野家では、
当代一の名工永徳斎の雛人形をあつらえ、
桃の節句には家族の人形を一堂に飾ってお祝いをしたという。

次女の初節句に、娘2人の雛人形のみならず、
御所人形や市松人形、西洋人形に、
いつも遊んでいるおきあがりポロンちゃんまで飾られている写真が残っており、
展示では、そのまま再現されていた。


今年は、うちでもあれをやってみようよ。

母の家に、私と妹の雛人形を運び込み、雛壇を2つ設営し、新しく緋毛氈を1つ買った。

雛人形は流行がある。最近は親王飾りや三段飾りが主流で、高度成長期にピークを迎えた七段飾りは少なくなってきた。

階段のホネも七段飾り用の緋毛氈も
うちのように古くなったから買い換えようという人のためで、
今後はなくなっていくだろう。


母は戦時中の生まれだ。戦争末期、雛人形は奢侈品のため製造が禁止された。

そんな中、ようやく曾祖父がみつけてきた雛人形である。

物のない時代、孫の生長を願う気持ち一つだったかと思う。

男雛の刀は、頭に龍がついていて、ちゃんと刃が抜けるようになっている。
女雛は当時の流行りだった天冠(てんかん)を乗せている。

戦争中に親戚から預かっていたものが混じって、3人仕丁は6人もいる。

ねずみにかじられて頭がなくなった右の随臣は、いつも烏帽子だけかぶせていたが、
新しく粘土と胡粉でカシラを作ってやる。

箱をガサガサ探っていると、やたら大きくて立派な雛道具が入っている。

木製で、このまま食器として使えそうなほど大きい。紅白の餅まで木製だ。

こんなの持ってたっけ?

このお道具はね、と母が昔語りを始める。

40年前かなあ、地元のおもちゃ屋さんが閉店するからって、
店頭で雛道具だけ売っていたのを買ってきたのよ、という。

最近は何人飾りと言ってセット売りが普通だが、

昔はちょこちょこと買い足していったそうだ。


一番上には三対の内裏雛を並べ、

三人官女、五人囃子、随臣、三人仕丁、それに

母が子どものころ、祖父が京都のお土産に買ってきてくれた京人形、

祖母が作った木目込み人形、

妹が学生時代に、家族の当時着ていた実際の服の生地で作ったぬいぐるみ、

夫が作った犬筥の屏風と貼り交ぜ屏風。

家族の歴史が詰め込まれた雛壇が出来上がった。


赤い色が魔を祓うとされる緋毛氈が、部屋の空気までも明るくしてくれる。

数えてみると、52体のお人形たちが集合した。

人形のサイズが違っているのも味が出ていい感じだ。

お互い、初めて会うんじゃないかな、と妹が言う。

「はじめまして」「お噂はかねがね」

「私は80年前にこの家にまいりまして」

「私は最近で」

とかなんとか、話し合ってるかもしれぬ。

妹のと私のは、昔は同じ部屋に飾られてたから、同窓会だね。

内裏雛として、同じ段に飾られたのは初めてのことだ。

案外、びっくりしてたりして。

「今日はいったいどういったアレなのかしら・・・」

まあ、みんなで仲良くしてよ。

家で育てたコーヒーの木から実を収穫し、焙煎し、淹れて飲んだ珈琲の味

「パパのコーヒーの木に実が生ったよ!」と弾んだ声で母から電話があった。

珈琲が好きだった父を偲び、亡くなった直後にコーヒーの小さな苗を買った。

珈琲の苗育て来ぬ星型の花去年ひとたびは咲きたりき (嘉代子 『飛鳥』より)

その後日談である。

その木がいつのまにか大きく育ち、ついに実を結んだ。

植物園では見かけるけど、温室がないのにコーヒーって育つんだと驚いた。

苗を買った時、いつか実が生ったら、コーヒーを淹れて飲めるのかな、などと
話してたのは夢物語だったが、まさかホントの話になりそうだ。

どうやら、昨今の温暖化により、日本の家庭でも可能になってきつつあるという。

実っていくつ生っているの?

1、2、3・・・5個。5個ある!

よし、大事に育てて、焙煎できるものならやってみようよ。


どうすればいいのか、最終的に口に入るのでちょっと怖いと思い、本も調べたが、
わかりやすかったプロのサイトを参考にすることにした。

前半「コーヒーの木から実を収穫するまで」工程と
後半「収穫したあとの生豆を家で焙煎する」工程とを、
それぞれ、以下のサイトを参考にした。
ここにお礼を申し上げます。

「コーヒーチェリー収穫と精製(ウォッシュト)作業&カスカラ作成」(©2022-2025 あしたも焙煎 roasted by ハッピーサト.)
https://sato-coffee.com/coffeeprocessingcascara/

「【お家でお手軽】フライパンで焙煎する方法と焙煎のコツを解説」(© 2021 CoffeeSwamp/AIKACOFFEE)
https://aikacoffee.jp/easy-at-home-explains-how-to-roast-in-a-frying-pan-and-tips-for-roasting

コーヒーの実を収穫した後、どのように味わうか、3つの方法を試してみることにした。
1)コーヒーチェリーを生食する
2)カスカラティを飲む
3)豆を精製し、焙煎し、コーヒーとして飲む

いろんなふうに味わえるんだねえ。やってみようよ!


コーヒーの実の収穫

コーヒー収穫祭に、妹と私が母の家に集まった。さあ、とりかかろう。

すっかり大きく立派になった木。最初はほんの、手のひらぐらいだったのに。

生ってる、生ってる。

緑の葉っぱに赤いピカピカの実が映えるなあ。

ここだけ、常夏の雰囲気だ。

東側の窓際にずっと置いてあって、
世話らしい世話はしなかったが、日当たりだけはよかった。

熟してるのかどうか見た目ではよくわからない。

今は、11月半ば。

これから徐々に寒くなっていく。
温暖な気候のものだ、
寒さにやられてだめになってしまってもおもしろくない。

それに、あまり熟しすぎるのも良くないような気もする。

思い切って決断「よし!収穫だ」。

2024年11月13日、収穫。5個。


コーヒーチェリーを生食する

この赤い部分が食べられるらしい。

木に成る多くの実のように、実の中に種があるしくみなのかな。

柿とか、梅とか、枇杷のように・・・?

果物屋さんで売ってるのを見たことがないから、なんだか不思議。
だが「コーヒーチェリー」とちゃんと名前もある。

赤くてきれいではあるが、固くてふわふわしていないから、
たしかに、ソメイヨシノの実に似ている。
あれも、実が生る。おいしくはないけど。

これはどうなのかな。

こわごわ、カッターで皮に刃を当ててみる。

いいね? いくよ!

あ、思ったよりやわらかい、中からヌルヌルのが出てきた。

くるりと刃を入れて、割ってみる。

この赤い皮と、皮にひっついたほんのちょっとの果肉、
ヌルヌルしたところが食べられる。

たしかにサクランボに構造は似ている。

さあ、食べてみよう。5つのうち3つを母と妹と私の3人で一つずつ食べてみる。

あれ、おいしい!

皮が甘いねえ。ちょっと酸っぱい。けど、渋くないよ。うん、おいしい!

おいしいとは全然思ってなかったから、逆にびっくりする。

ちゃんと熟してたようでホッとする。


コーヒーチェリーティー(カスカラティ)

さて、次は、このコーヒーチェリーの皮を天日乾燥させる工程に入る。

これを「カスカラ」という。

さっき5個のうち、3つは食べちゃったが、
残りの2つの皮をそっと剥いて、皮をざるの上で干す。

ざるごと2週間、外に置くことにする。

さあ、2週間経ちました。

量ってみましょう。0.3グラム。

カスカラ10gに200mlのお湯とあるけど、1グラムもない。

どうしよう。10ccでいってみるか。

お湯を注ぎます。さすがに少ない、もうちょっと。

数分待つ。色がちょっと出てきた!

よし、飲んでみよう。

およ、これは、ハーブティだね!

ほの甘くて、たしかにローズヒップティに似ている。

それと、驚くべきかな、「ちゃんとコーヒーの味する!」

どれどれ、とみんなでチュッと一口ずつ飲んでみる。

こんな薄い色なのにコーヒーの味がほんのりするので、全員で不思議がる。

皮なのにねえ!


コーヒー豆の精製

カスカラティは実は前座。今日はもう一つやることがあるのだ。

いよいよコーヒー豆の精製なのだ!

ウォッシュトの手法でコーヒー豆を精製する。

コーヒーチェリーの皮をざるで干しているのと同時に、

種の部分は2日間、水に漬けておいた。

こうしてみると、ほんとうにサクランボの種みたい。

1つの実に2個タネが入っている。

その後、水で洗いながら、タネの周りのぬめりを取り除く。

母から、「オクラの網袋でこすって取っておいたよ!」と報告がある。

ざるに乗せて2週間天日で乾燥させる。

11月29日。収穫が13日だったからちょうど2週間経ったのがこちら。

すっかり珈琲っぽくなっている。

茶色いのが、皮で、さっき、カスカラティにしたもの。

白いのが実。

1個変なのもあるね。けど、あとのはいい感じ。

せっかちの妹は、「できたの?」と言ってくるが、

いいや、まあだまだ。

これから、皮をさらに剥くんだ、脱穀だね、と答える。

爪の先で皮をプチンと押すと、中からは緑色の生豆が!

おおおおお!これは、コーヒー店で写真で見たことがあるぞ。

なんかボソボソしていて心細いが、1グラム、9粒の生豆ができた。

「できたの?」とまたまた妹が言う。

まあだまだ、これから焙煎だよ。


フライパンで焙煎する

さて、お待ちかね、生豆をフライパンで焙煎しよう。

家でフライパンで焙煎するってぇと、つまり乾煎りってことだな。

ってことは、

高温になってセンサーが働いてコンロの火が消えるかもしれぬ。

それを避けるため、温度センサーを解除しておく。

さあ、始めよう。

9粒の秘蔵っ子たちをフライパンに乗せる。

15分経過。炒っているいるうちにハゼるというが、1ハゼどころか、ゼロハゼだ。
・・・、もう少しやろう。

20分経過。ううむ、ハゼる気配なし。少し色がついてきたか。

25分経過。ハゼなし。これ以上やっても焦げるだけでよくなさそう。


もう、これぐらいにしておくか。
ちょっとだけコーヒー色になってきたってことでいいか!

浅煎りも浅煎り、だ。

電動コーヒーミルを久しぶりに出してくる。

父が亡くなってから豆から挽くこともなくなったミルだけど、こんな少ない豆で挽けるかしら。

ダメな時に備えてフープロもあるけどね。

スイッチ、オン!

ブイーン!

おお、できた!

フィルターをセットし、お湯45ccを注ぐこと数分。

うむ? かなり色が薄いが・・・、けど、飲んでみようよ。

果たして・・・?

うむ、色は薄いが、ちゃんと味はコーヒーだ!

上品でいい香りのコーヒーである。

立派にコーヒーが淹れられたよ!

パパのコーヒーの木で淹れたコーヒーだよ。

そう言って、父の遺影に供えた。

母の歌集の歌評

(※ 2月13日に追記しました)

昨年9月に母が出版した歌集は本人が思う以上に評判がいいようだ。

母から、誰々さんからメールが来たの手紙が届いたの、こんな感想をもらったの、
連日のように華やいだLINEが送りつけられる。

だが、表紙も褒められるのよ、とも言うので、
表紙カバーに作品を提供したわたしもうれしい。

所属しているいくつかの歌会で批評会を開いてもらったり、花を頂いたりして、
人生で初の歌集を世に出して、それを存分に味わっている彼女の様子は、
家族を巻き込んでのこの1年半の苦労を十分に報いてくれる。

うちでは、父のほうが友達付き合いがよく、母はそうでもない、と
もっぱらの評になっていたが、
いつのまにか、母はたくさんの仲間に恵まれていた。

歌集作って本当に良かったああと最後は必ず言う。

短歌雑誌に歌評が掲載されたので、ご案内いたします。


◎「心の花」2024年12月号 Vol.1514(竹柏会)
https://kokoronohana.sakura.ne.jp/kokoronohanashi.html
2024年12月号 目次2
https://kokoronohana.sakura.ne.jp/kokoronohanashi/2024_12mokuji2.pdf
「長信↔短信」峰尾翠 P.98


◎「短歌往来」2024年12月号(ながらみ書房)
https://www.nagarami.org/2024/11/15/短歌往来-2024年12月号/
「書評 原口嘉代子歌集『飛鳥』 馥郁たる昭和の香り」清水あかね P.127


◎「短歌」2024年12月号(角川文化振興財団)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322311000953/ (紙)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322311001048/ (電子書籍)
「歌集歌書を読む」大西久美子 P.192


(敬称略)

旅と読書と能のこと、亡夫の挽歌であること、百年を経た古い家での丁寧な暮らしについて、
峰尾さん、大西さん、清水さんが触れてくださっている。
幸綱先生の帯に現れる好奇心旺盛でどこへでも出かける自由闊達な母の姿とともに、
母の人生の軸であるとあらためて思う。

原口嘉代子 歌集『飛鳥』(ながらみ書房 2024年9月)
https://www.nagarami.org/2024/09/01/原口嘉代子歌集-飛鳥/

母の歌集の表紙カバーに作品を提供しました!

東京メトロ24時間券でいく「東京十社めぐり」

よし、東京十社めぐり、いくか!と思い立ったのが、年末。

祓えの意味も込めて、行ってみよう。

東京十社とは以下の通り。

東京十社めぐり http://10jinja.tokyo/

各神社で授与しているミニ絵馬がかわいいと評判。
これは、王子神社の社務所に飾ってあったもの。
行ってみると、それぞれの神社の特徴が版画にしたデザインですてき。


行くまで、どう回ろうか、路線図とにらめっこする日々が続いた。

体力も落ちてるし、2日ぐらいかけて行こうと思っていたが、

当日、予想外にすいすい行けた。

それで、いまのところ、「これだ!」と思っているルートを公開する。

優先順位は

(1)東京メトロの24時間券※を最大限使い費用を抑える。
できるだけ他社線、バス、タクシーは使わない

(2)できるだけ同じルートをなぞらない。
X駅-Y駅を往復する際にも、行きはX-A-Y、帰りはY-B-Xを通る。
一筆書きするイメージ。
(違うルートのほうが楽しい ときに迷うことも)

※現在600円 2025年3月15日より700円に値上げされる予定

結果、

もっとも安い・・・1,380円
少し楽で早い・・・1,621円
(2025年1月末日現在)

図を作り始めたらけっこう時間がかかって、

半日かかったところで、ナニヤッテルンダと我に返ったが、乗りかけた船と続けた。

これを、こう回る!

ルートの取説

★このルートのよい点は、円になっていることである。
円になっているので、どこからスタートしても良い。
今回は便宜上、王子駅からスタートしているが、
行きやすいところから始められる。

★朝9時にスタートして、17時にゴールにたどりつくこと、
本殿参拝のみを想定したルートである。
駆け足ではないが、ゆったりしている暇はない、ぐらい。

★徒歩の時間は、「東京十社めぐりのしおり」(各神社で配布されている)を参照した。


1)王子神社
王子駅
↓徒歩3分
王子神社

近くには、江戸時代からの花の名所の飛鳥山あり。
最近、この町は渋沢栄一で盛り上がっている。住まいと創立した王子製紙があったから。
飛鳥山には晩香廬(ばんこうろ)と青淵文庫(せいえんぶんこ)という別邸が残されている。


2)白山神社

王子神社
↓徒歩3分
王子駅
↓南北線6分
本駒込駅
↓徒歩7分
白山神社


近くに住んでいた孫文の碑。「先生」と書いてあるのがいいねえ。


3)根津神社

白山神社
↓徒歩16分
根津神社

つつじの名所。千本鳥居も有名。
お天気で、近所の幼稚園の子たちがお散歩に来てた。

根津駅のそばで、金太郎飴屋さんを発見。
小箱がずらっと並んでいて、ガラス戸のつまみを上げて飴を取る、昔ながらのお店。
え、今って、令和だよね、と思う。よいおみやげに。


4)神田明神

根津神社
↓徒歩5分
根津駅
↓千代田線3分
新御茶ノ水駅
↓徒歩5分
神田明神

偶然にも、祓え式をやっていたので、わたしも参加。
巫女さんの舞が美しい。清らか、とはこういうものか。
すっかり祓われて、いい気分に。
神田明神は年末の祓え式をyoutubeでライブ配信するらしい。遠隔で祓われるのか、すごいな。
参道では甘酒を売っている、おいしそう。


5)亀戸天神社

神田明神
↓徒歩5分
御茶ノ水駅
↓総武線10分 167円
亀戸駅
↓徒歩15分
亀戸天神社

※優先順位(1)としては東京メトロを使うところだが、
亀戸駅からの風情ある町並みが捨てがたいので、
ここは(2)を適用しJR総武線(黄色)を使う。

東京メトロならば以下のルートだが、
乗換もあるし時間もかかる。(赤の点線・紫の点線と実線)

神田明神
↓徒歩5分
御茶ノ水駅
↓丸ノ内線3分
大手町駅乗換
↓半蔵門線12分
錦糸町
↓徒歩15分
亀戸天神社

藤棚が広い!
境内で「♪てんじんさまのーほそみちじゃー チンチロリン」と音楽が鳴っていて、
口ずさみながら参拝。
本殿の向こうに、スカイツリーが見えた。

神社の周りには、おもち屋さんや甘味処があって、そそられる。
お祭りに使う道具関係の会社なんかもあって、ここの土地ならでは。

6)富岡八幡宮

亀戸天神社
↓徒歩15分
錦糸町駅
↓半蔵門線10分
三越前駅乗換
↓銀座線1分
日本橋駅乗換
↓東西線3分
門前仲町駅
↓徒歩3分
富岡八幡宮

さすが深川、横綱力士碑と大関力士碑がある。
近所に住んでいた伊能忠敬の碑も。ここから地図作りの旅へ。

読みは、鳥居に「富ヶ岡八幡宮」とあるから混乱したけど、「とみおか」でいいみたい。
公式サイトがtomiokaとある。
疲れてきたなあ、境内にベンチがたくさん。
展示してある純金の神輿を見ながらひとやすみ。
「深川八幡祭り」、日枝神社「山王祭」、神田明神「神田祭」、あわせて江戸三大祭り。


7)芝大神宮

ルートA(ピンク)
富岡八幡宮
↓徒歩3分
門前仲町駅
↓都営大江戸線10分 220円
大門駅
↓徒歩4分
芝大神宮

ルートB(ブルー・オレンジ点線・黄緑)
富岡八幡宮
↓徒歩3分
門前仲町駅
↓東西線3分
日本橋駅乗換
↓銀座線4分
新橋駅乗換
↓JR山手線3分 146円
浜松町駅
↓徒歩5分
芝大神宮

※ここは時間か予算か悩ましい。

A:都営線を使えば門前仲町駅から大門まで1本で行けるが、乗車10分、220円、徒歩2分。

B:東京メトロとJRだと乗車3本乗り換えが煩雑、146円、徒歩5分。

最寄駅から神社まで歩くのに、こんもりした森をさがすといい。
だけど、芝大神宮だけは通用しない。うっかり増上寺にいってしまう。
芝大神宮は、東京タワーを見上げる都会の、
飲食店が立ち並ぶ通りのこんなところに?と思う角を曲がると
いきなり参道がある。


8)品川神社

芝大神宮
↓徒歩5分
浜松町駅
↓JR山手線6分 167円
品川駅乗換
↓京急線3分 150円
新馬場駅
↓徒歩1分
品川神社

優先順位(1)と(2)を適用すれば、
往路復路どちらかは品川駅から徒歩で行きたいが、
グーグルマップによれば20分かかるというし、
ここまでわりと疲労がたまってきている上に、
最後に日枝神社から氷川神社まで歩くことを考えると
なるべく体力温存、時間もとっておきたい。
よって同じルートで戻ることにした。

優先順位(1)のため、バスを使うことは考えてなかったが、
バスもあるみたい。点線で示した。

第一京浜に面した、海を見下ろすところに建っている。
海が近いから鳥居に巻き付いた龍も強そう。

本殿に年末の大祓えのためのヒトガタが置いてある。
からだじゅうを「いいこ いいこ」と撫でて、名前を書く。
よかった、これで来年も大丈夫。


9)日枝神社

品川神社
↓徒歩1分
新馬場駅
↓京急本線普通3分 150円
品川駅乗換
↓JR山手線8分 167円
新橋駅
↓銀座線
溜池山王駅
↓徒歩5分
日枝神社

日枝神社こそ、都会のど真ん中に建っている。首相官邸がおとなり。
石段にエスカレータが設置されている箇所もあるそうだ。
こちらも千本鳥居が有名。
江戸時代、山王祭は神田明神の神田祭とともに将軍が上覧する天下祭。
有名な山車は、浮世絵にも描かれている。さいたま市岩槻の人形博物館で観たもの。

歌川芳藤「東都日枝大神祭礼練込図」


10)赤坂氷川神社

日枝神社
↓徒歩17分
赤坂氷川神社

深い森に囲まれた神社。
六本木にこんな森が?と思うほど。
おちついた気分に。
勝海舟は維新後、このあたりに住み、『氷川清話』を残す。
こちらは、勝海舟によって名付けられた
四合稲荷(しあわせいなり)。
幸せになれそう。

日枝神社から赤坂氷川神社までは歩く途中にこんな像もあった。
勝海舟坂本龍馬の師弟像。


ここでゴール!

帰りは溜池山王駅から、南北線で本駒込駅に行くと、
ちょうど皇居を円で囲んだことになり、
偶然にも、「東京十社めぐりのしおり」に近い図になる。

東京十社めぐりのしおりは各神社で無料で配布されている。


正月に、根津で買った「えと飴」と、お汁粉を食す。よい新年に。