2019/11/16

第29回紙わざ展 紙わざ大賞入賞作品展 出展のおしらせ

このたび、原口比奈子がペーパーアートのコンペティションに入選し、
下記展覧会に出品いたします。
「紙」の可能性を追求する作品80点が展示されます。
有楽町、銀座にお越しの節は、ぜひお立ち寄りくださいませ。


出展作品 《IMAGINARY MAP》(90×150cm 雁皮紙、インク 2019)部分

染みをつけた半透明の雁皮紙にインクでドローイングを描いた作品。

タイトルは、冒険物語の空想上の地図、もしくは脳裏に浮かぶ思考を示す図解という
二重の意味をもたせています。
思考が浮かんでは消え、枝分かれしていく様子は、
できごとが起こったことを記した地図に似ています。

雁皮紙のシャリ感と光沢感、透明感もお楽しみください。


 

第29回紙わざ展 紙わざ大賞入賞作品展

会期:2019年11月26日(火)~30日(土)10:00-19:00(最終日は18:00まで)
場所:東京交通会館2Fギャラリー 東京都千代田区有楽町2-10-1
主催:特種東海製紙株式会社
協賛:王子エフテックス株式会社/新生紙パルプ商事株式会社/株式会社竹尾/平和紙業株式会社(50音順)
入場無料
なお、本展は1年間、全国を巡回する予定です。
https://www.tt-paper.co.jp/pam/kamiwaza/prize/

入選作品一覧
https://www.tt-paper.co.jp/pam/kamiwaza/app/files/uploads/2019/10/7f59dd92f825fe3718b4836c0adedc43.pdf

2019/11/15

バスキア展とつげ義春展

バスキア展に行ってきた。

大きなサイズの作品がたくさんあってサイズのことを私はずっと気にしながら観た。

入場するのに大勢の人が並んでいるのを見てふと思ったのだけど、わたしは美術作家でなかったら観に来ていたかなあということだ。

最近は美術館に行くのも他人の作品を観るのも、自作の栄養にしようと思ってのことで、そういう意味では純粋に美術鑑賞しているのではないと思う。美術が好きというよりも。

自分の作風は、実は大きい作品に向いているのではないかと思い始めている。だから今はサイズのことばかり気になる。だいたい2M×2Mか、120号がいくつも並んだ展示室はいい感じだった。だけど、大きい作品を作るには、クリアすべき課題がある。制作及び保管スペース、それにキャンバスは作ったことがないからなあ。

 

それはそれとして、帰りがけにカーテンが奥にかかった一角があって、つげ義春展と書いてある。準備中かな、と思ったら、この小さなコーナーが展覧会だという。なんと「ねじ式」の原画が展示されていた。ついでに見られてなんかうれしかった。

つげ義春本人と「ねじ式」の少年はやはりよく似ていた。わたしの「作品は作家に似る説」をまた証明するケースである。

ほら、ね?

鼻とか目とか口元そっくり。

原画を手前に、展覧会名を裏から撮ったら鏡文字になって、気に入っている写真。

イシャはどこだーと「眠科」と看板がでている街を歩くシーンは、誤植がかえって不条理さを増していて、こっちのほうがいいと思うのだけど、のちに正しく直されているらしい。

文字と絵がある、というのはわれわれは漫画表現で慣れていると思う。文字が画面に出てくるバスキアの作品を観て、つげ作品を観て、そう思った。


美術というより、別の意味で注目されている作品。
でもこの作品はたしかにほしくなる作品だと思う。世田谷美術館蔵の作品《SEE》と、個人蔵の黒い画面に白いシルクスクリーンインクで文字が描かれた作品《中心人物の帰還》もほしい作品。

とは、自分でもびっくりする感想。今までコレクターってどういう心持なのかしらんと思っていたから。やはり、2作品とも日本人の個人蔵なのが、自分も、と思う契機になっているようだ。そう思った鑑賞者もいるかもしれない。

《SEE》は https://www.setagayaartmuseum.or.jp/about/collection/modern_contemporary/

《中心人物の帰還》は https://casabrutus.com/art/118157/3

《SEE》とは別の作品の部分。シルクスクリーンインクは強さがあってきれいだ。ペンのように描かれているけど、シルクスクリーン技法で描かれているのか、それとも、インクを出すようなペンを自作しているのか。


六本木ヒルズ52階から見た夜景。空と分かつ明かりの線がまっすぐ一直線で、でこぼこした街の風景でも水平線が生まれるのだなと思った。それほど遠くから俯瞰できる場所だということにも驚愕した。果たしてこんなふうに世界を見ていていいのだろうかと思う、神の視点ではないのかと。ムスカのようになってしまいそうで、一方でぞくぞくするほどの興奮もあって。

 


バスキア展 メイド・イン・ジャパン
2019.9.21(土)~ 11.17(日)
森アーツセンターギャラリー

つげプロジェクト VOL.1 ねじ式展
2019年10月30日(水)~12月1日(日)
六本木ヒルズ森タワー52階 THE SUN & THE MOON内 東京カルチャーリサーチ

2019/11/10

ご褒美陶器

コンペに入選したらいつも記念とお祝いを兼ねて、特別な陶器を買っている。

今回も、ちょうどよいものがタイミングよく見つかってさっそく予約した。

お正月によさそうな和食器。私のニックネームhinoという名前が一部についていたので、即決した。色もデザインもすてき。

和食器は初めてだなあ。こういうのもいいなあと思う。

うちに届くのは、今月末。ちょうど展示の前日に届く。こっちも楽しみ。

2019/11/10

巡回展に出展! ワクワク

紙わざ大賞入賞作品展は、有楽町を皮切りに1年間、全国を巡回する。これはうれしい。

今年九州に引っ越した友人に先日のWSの話をしたら、九州でもやってくれればなあと言うので、頼まれればいくらでも行くよ!と冗談交じりに言ったのだけど、さっそくかなうとは!

まだ、どこで展示するかは確定ではないけど、昨年は静岡や高知、仙台でも展示したようだ。これまで西日本で展示したことがなかったので、はじめて西に行くのがとにもかくにもうれしい。

それに、主催企業に展示と搬出入をすべてお任せなのだけど、そもそも紙の作品は繊細なものが多く、水に弱い、圧力に弱い、ホコリが着きやすい、フラジャイルだから箱にしまうのも一苦労。自作じゃないものを扱うのはきっと神経を遣うだろうと思うと、ありがたいなあと思う。

以前、有楽町の展示を観に行った時は(これはただ観にいった)、スタッフの方がたくさんいて、どうぞどうぞと来場を促して、オーディエンス賞の投票をしたらすてきなメモ帳をくれたりして、さかんに紙の啓蒙をしていた。なんだか盛り上がっていたなあ。

これ紙でできてるのーなんて言いながら見てる人もたくさんいた。細かい手作業と豊かな発想があいまって、紙と一口に言ってもいろんな表現があるなあと、まさに「紙の可能性」を感じた展示だった。きっと、今回もすごい作品がいっぱいあると思う。

なお、私の作品は、雁皮紙の美しさを活かした作品です。雁皮紙のシャリシャリ、キラキラした感じと透明感! 巡回展では会場の都合ですべての作品が展示されるかわからないと注意書があった。できれば展示されたい。


入選と出展のおしらせ

下記コンペに作品1点が入選し、出展いたします。ぜひご高覧ください。

名称:第29回紙わざ大賞 入賞作品展
会期:2019年11月26日(火)~30日(土)10:00-19:00(最終日は18:00まで)
場所:東京交通会館2Fギャラリー 東京都千代田区有楽町2-10-1
主催:特種東海製紙株式会社
協賛:王子エフテックス株式会社/新生紙パルプ商事株式会社/株式会社竹尾/平和紙業株式会社入場無料
https://www.tt-paper.co.jp/pam/kamiwaza/prize/

2019/11/10

大きなサイズの絵を描くことと「ちょっくら江戸へ」深川江戸資料館

このところ、書くのが怖くなったり、書きたい主題が固まってから、とか考えすぎていた。もっと気楽に書こう。

今日は、搬入に行った帰りに、清澄白河の深川江戸資料館に行った。杉浦日向子さんの企画展が明日までだった。1年間やってるからいつか機会を見てと思いつつ、いつのまにか会期終了間近に。搬入がスムーズにいかなかったら無理だな、あきらめるかと思っていたが、思いのほか早く終わったので、寄ることにした。大丈夫、今から行けば、1時間見られるよっ!

 

だけど、その前に搬入の話。

アトリエで描いてるときは、「この絵、相当大きいなあ」と思う。電車に持ち込むときも、あんな大きなもの持ち込んで大丈夫かなと思う。でも、搬入するときは、部屋が大きいから絵がそれほど大きく思えない。あれ、これぐらいのサイズだったっけ?と拍子抜けする。

だから、アトリエで描いてるときも、正しいサイズ感をもって描いたほうがいいんだろうなと思う。とはいえ、空間の感覚っていうのはむずかしい。経験を積んでいくしかないと思う。

搬入は、他の作家も来ていて、みんな一人で黙々と作業をしていた。梱包を解いたり、電動ドリルで作業したり、プチプチをしまったり、だ。ああいう姿をみると、絵は相変わらずアナログで、一人で描くものだなあと思う。

思うに任せないことも多いが、大きい絵を描ける今の状況に感謝しようと思う。以前のアトリエでは、絵を置きっぱなしにしたり、壁に仮に架けたりすることができなかった。気を回すことが多くて制作に集中できなかった。制作に倦むときも、この状況が続く保証はまったくない、来年はどうなるかわからないのだから今描くしかないと鼓舞した。制作する気持ちがなくなることが一番こわい。気持ちがあるうちに制作せねば。

少し年若の知人の作家が、とにかく続けていけばいいんだからとこともなげに言っていた。前を向く決意表明だろうと思うが、私は続けられなくなることはあると思っている。家庭環境、住む場所、仕事の状況、急に病気になることだってあるし、そもそも気持ちが向かなくなることも。私は経験があったから、簡単にはうなづくことはできなかった。確かに若い人は自分の気持ちのコントロールが可能だと信じているものだ、私も。

今は、制作できる今の状況に感謝しながら(うわ、自分で言って鳥肌がたつ!)、日々を過ごしていこうと思う。


それで、深川江戸資料館。知人がすごく楽しかったよ、と言っていたので、ずっと行きたかったけど、清澄白河はうちからちょっと遠い。何かのついでにいけたら、と思っているうちに1年がたっていよいよ杉浦展が終わってしまうので、今日むりやりに行けてよかった。

江戸時代末期の深川佐賀町の町並みが復元されていて、長屋に上がり込んで、生活道具を自由に触れる。台所にお茶碗、枕にお布団とか。おい、はっつあん、なんだいくまさん、と落語の舞台になりそうだ。次は誰かと一緒に行って落語みたいに即席コントをしたい。

海外のお客さんもたくさん来ていて、ボランティアスタッフによる英語の解説を彼らに交じって一緒に聞いた。道具を手渡し、これを使ってみろとか、何に使うと思うかとか、船宿を指しながら川遊びではなくタクシーである、ここで客が待っている、これは川ではなく人口の運河だ、お稲荷さんは今でもコンビニで買える、といった解説がなんだか楽しい。

その向こうではオランダの灌漑とはこの点が違ってとか難しい話をしている人も。

長屋の井戸のそばに外国人の4人家族がいて、私が通りがかると、9歳ぐらいの女の子が私に向かって、あ!と指をさす。ん? すると彼女は自分のセーターを指さす。あ、セーターの柄がお揃いだね。彼女のセーターはウッドストックで、私のはスヌーピー。隣りには学校に上がる前ぐらいの妹がいて、彼女はスヌーピーとウッドストック。私の胸のスヌーピーを人差し指で直接触ってきた。同じだ同じだ、というようなことをキャッキャと言っていた。こんなとき何かおしゃべりができたらよかったのにね。日本語が一切できなそうだったので、きっとツーリストだろう。それにしても、小学生にとってお揃いっていうのはうれしいものなんだなと思う。

英語のガイドさんは生き生きと解説をしていて、お客さんとのやりとりも丁々発止、江戸時代の博物館に行ったのに、かえって海外の観光地に来たような気分になって、もう少し英語ができたらなあと思いつつ、浮かれついでに深川めしの素を買って帰った。

 

杉浦さんが語る江戸の人々の暮らしは本当にいい具合にいい加減で、のんきで、言葉は粋で威勢がよくって、どっちに転んでも生きていけるさという気分になる。

「猪牙掛かり」猪牙舟のように威勢のよいこと。威勢よく物事を行うさま。

ふうん、ちょきがかり、ちょきがかり、でいこうか!


では、タイムマシーンに乗って、ちょっくら江戸へまいりましょう!

火の見櫓が見える。長屋の屋根に猫。

猪牙を待つ船宿

天ぷら屋さん

長屋 クローゼットがないから下着はどこに置いたと思う? と問いかけられた。屏風の向こうに布団と枕を隠しておいた。銭湯に持っていく風呂桶の中には軽石と手ぬぐい。正面の戸棚にはお茶碗、箱膳も。台所ではご飯を炊くのとみそ汁を作るだけ、おかずは煮売り屋から買えばいい。シンプルな暮らし。


長火鉢と鉄瓶

仏壇もある。桐のタンスの引手って昔っから変わらないなあ。


どこの家にもちゃあんと神棚があるのがおもしろい。

深川江戸資料館 https://www.kcf.or.jp/fukagawa/
企画展「杉浦日向子の視点 ~江戸へようこそ~」
2018/11/13(火) ~2019/11/10(日)

2019/11/07

第29回紙わざ大賞 入選しました

第29回紙わざ大賞に入選しました!

やったー!!!

さっき、連絡が届いたー!!!

このところの暗いニュースでちょっと暗い気持ちだったんだけど、一気にテンション上がったよ―。

入賞作品展に出品されます。

出展作品《IMAGINARY MAP》雁皮紙、インク 画像はのちほど。

 


https://www.tt-paper.co.jp/pam/kamiwaza/prize/

名称:第29回紙わざ展 紙わざ大賞入賞作品展
日時:2019年11月26日(火)~30日(土)10:00-19:00(最終日は18:00まで)
場所:東京交通会館2Fギャラリー 東京都千代田区有楽町2-10-1
主催:特種東海製紙株式会社
協賛:王子エフテックス株式会社/新生紙パルプ商事株式会社/株式会社竹尾/平和紙業株式会社(50音順)
入場無料

入選作品一覧
https://www.tt-paper.co.jp/pam/kamiwaza/app/files/uploads/2019/10/7f59dd92f825fe3718b4836c0adedc43.pdf

 

 

2019/11/06

フィンガーペインティングWS あとがき

幹の部分は私自身も指で描きました。

ああ、楽しいなあ、ずっと描いていたいなあ、と

大きな画面の上で絵の具をにゅるーっと伸ばしていくのは新鮮な感覚で、

久しぶりに大きい画面に描いて、のびのびした気分にもなりました。

ああ、楽しいなあ、ずっと描いていたいなあ、こういうの好きだなあと。

2,000×100,000 mm 紙、アクリル絵の具、水彩絵の具


川口グリーンフェスティバル2019 出展
名称 原口比奈子フィンガーペインティング「みんなの手形で大きい木を描こう」
日付 2019年10月14日(月・祝)
場所 川口市立グリーンセンター
主催 川口グリーンフェスティバル2019実行委員会

2019/10/22

宝箱

レオ・レオニの技法についてWSをしたとき、「そういえば、みんなはこの材料、どうやってさがしたの?」と聞いてみた。

スタンプになりそうなもの、というのは子どもには難しい設問だと思ったから。

えぇっとね、家の中をウロウロしてたまたま見つけたの? それとも、あれがイケソウとまず思いついてから探しに行ったの?

すると一人の子が、自分は工作を趣味にしていて、材料になりそうなものをいつも集めている箱があって、その中から見繕った、という。

ナニソレ楽しい箱! 他の人には価値がわからないけど、これからすごいものになると自分だけは確信を持っている箱だ。自分がこれからすごいものを作り出すための原石たち。

宝箱だね、とわたしが言うと、彼女は、え、あ、うん、と照れる。わたしの宝箱はあれだよ、と、自分のアトリエの棚を指さす、使ったものとか使ってるものとか有象無象がごちゃごちゃとキチャナク置いてある。うふふふと二人で笑い合う。宝箱連盟。


子どもの頃、宝箱には拾ったものを入れていた。貝殻とかキラキラしたビーズとか。あるとき、公園の砂場で、見たこともないデザインのコインを見つけた。銀色で100円玉より少し大きくて、ピエロの顔が彫ってあった。外国のコインか、いや、魔法の国の貨幣に違いない! ドキドキしながらそっと持ち帰って箱にしまった。たまに開けて手の上に乗せたりしてけっこう長い間、少なくとも外国のだろうと思っていたけど、ずいぶん経ってからゲームセンターのコインだとわかった。夢から覚めた気がしたが、それでも、あのときのドキドキは忘れない。


友人が引っ越すという。彼女は紙を集めるのを趣味にしていて、コラージュ作品を得意としている。前に引っ越した時に、「こんな紙、カビちゃうんだからね!」と危うく家族に捨てられそうになったところを、「ヒャー!捨てないで―!大事なのー!」と追いすがったという。今回の引っ越しでももちろん持っていく。だってコレクションだから。

きれいな紙を集めるなんて、子どもみたいで、子どものままで、そういうところが彼女のすてきなところ。


亡父の書斎に来客があるというので、実家に帰って整理していたところ、「宝」と書いてある木箱があった。封がしてある。古そうだ。

これなに?と妹に聞くと、「これ、パパの。前に開けようと思ったら、急に重たくなって。きっとパパが開けてほしくないんだと思う・・・」妹はわりにそういうことを感じる人だから、それ以来、書斎に置きっぱなしにしておいたという。

私も父と妹を尊重して、そのままにしておこう。宝というネーミングが、なんともいい。そういうものを持っている人生って、なんだかいいものだ。

パパ、ちょっと動かすだけだからね、とつぶやいて、隅のほうに押しやった。

書斎には父の遺影がある。そこから見ているのかもしれない。

2019/10/16

はじめての石けんづくり 猫バスせっけん

前回はこちら

はじめての石けんづくり その後

あれから油もいろいろ揃えて、本格的になってきた。

それでマルセイユ石鹸と最高に贅沢な石けんと、色付きのオリーブ石けんを作ったはずが、その中に一人おかしい人が、、、。

???

こっちはいいよ。いい感じにできてる。けど、あやつが入った途端、雰囲気がヘンテコに。

本当は生クリーム状の種を流し込むんだけど、種が早めに固まっちゃって、マッシュポテトみたいになったのをぎゅーぎゅー型に入れたらパウンドケーキ形になったのだ。

妹に見せると「モッソリして猫バスみたいね」と言う。まさに!

薩摩弁で言うところの「ゴッタマシイ」石けんができてしまった。

だけどこれ、油も3種類も使って、精油も黒蜜も入れたんだ、素材はいいもの使ってるんだ、悪口言うな、とかばうようなことを言いながら内心「謎石けん」と思ってる。

そしていよいよ、カットすることにした。

「猫バス」は焼芋になっておる。

2019/10/16

台風の夜

うちは川の隣りだというのに、後から考えればずいぶんのんきにしていて、昼はワークショップの打ち合わせや資料づくりをし、夜は石けんづくりをして、ちょうど10:30ごろは雨も上がったしPCでドラマを見ようなんて思っていた。ついでにチラッと川の水位のウェブページを開けたら、さっきまでオレンジだったのが急に赤く色が変わって「氾濫注意」になっていた。
それまでは、みんな大げさなんだよ、と思っていたし、雨がやんだからもういいだろうなんて思っていたんだろう。

「ちょっと川を見てくる」と出かけると、ふだん見ないような高さに水が光っていて、ぎょっとした。すぐ足元の先まで水がタプタプと迫っていた。あれ川か? 暗くてよく見えないが、どう考えてもおかしい。ふと気配に振り返ると、パトカーが音もなくゆっくり徘徊していた。避難してくださいとゆっくり静かに呼びかけていた。もう残っている人はいないことを確認しているかのような不気味な雰囲気に、あたりを見渡すと隣家の明かりは消えている。その前の家も、その隣りの家も人気がない。みんないつのまに避難してしまっていたのか。妙に静まり返っていた。私たちは、完全に取り残されてしまっているのだった。

あの水がこのまま押し寄せてきたら! 今、命が危険にさらされているのだという気持ちが突然湧いてきて、静かに震えてきた。『風が吹くとき』の老夫婦のように、家にこもりっきりで外では大洪水が近づいているのにも気づかずにいたんだ、と思った。

川が氾濫したらもう逃げようがない。この数分の判断が命を分けると思うと、うまく物が考えられなくなった。もう避難場所に行くのはあきらめよう、それより今すぐ2階へ避難しよう。この判断は正しいのか。

震えが収まらないまま、大事なものを2階に上げておこう、大事な物ってなんだ? 布団が濡れたら面倒だとか、PCが壊れたら高価だから買えないとか、そういう、大事かどうかじゃないことばかり気になった。床上浸水したら後始末が大変そうだなあ、この材料が水没したら明後日のワークショップができなくなる、命が危険だというのにそんなことを考えている自分が、なんだか滑稽だった。滑稽だったと思い返せればいいのだけど、とも思った。

1時間ぐらい、荷物を運んだりしているうちに少しだけ落ち着いてきた。たぶん雨がやんだせいで、時がゆっくり進み、焦りが少なくなった。でも、雨がやんだのに、水位はさらに上がる予測だった。何が起こっているのだろう。荒川に流れ込めない水がたまっているのだろうか。2駅先に住む家族は雨が上がって一安心していたのに、こちらは今が正念場になっていた。

荷物を2階に上げる途中も、水位のウェブページを更新し続けた。10:50に氾濫注意になっていた。それがさっきだったのかとわかる。その後もじわりと上昇している。雨はもはややんだ。だが、川の様子だともう50センチも上がれば、道に水があふれてくる。水はゆっくりと確実に命を奪うだろう。思うだけで息苦しかった。引いてくれ、と祈った。更新のボタンを押す。まだ下がらない、上がっている。数字をカウントする。もう、あと少し上がったら。いや、水位が下がった。万歳。助かるか!

水位の数値はそれとして、もう一度川を見に行こうと思った。余裕が出てきたのか、少しやじうま的な心境になっていた。見ると、さっきよりは下がっているようだ。ふわふわした身体の重心が元の位置に戻ってきた。

少し、歩いてみようか。

あんなに雨が降っていたのに、夜中、月が照っていたのを覚えている。周りは住宅の明かりがなくて、人気がなくて、月だけがいやに明るくて、私しか世界にいない、そんな気がする静かな夜だった。みんなどこかへ行ってしまったとさっきは思った。でも、ああ、2階の窓に明かりがともってる、あそこの家も。みんな2階にいたんだ。

命というのは形がない。どうとらえてきたか、それは生きる期間だった。あと何年とかそういう。だが、水でゆっくりと失われていくと思ったとき命は、今の瞬間の呼吸だった。

疲れているのにすぐには寝られなくて、といって何かをする元気はまったくない。寝たのはもう明け方だった。

そんななかでも、カットした石けんだけは、テーブルの上に広く陣取ったままだった。なんとなくそれも滑稽に思えた。

増水した川 夜中で一瞬目を疑った