投稿者「hinako」のアーカイブ

母の歌集の表紙カバーに作品を提供しました!

この度、母が歌集を出版し、表紙カバーに私の作品を提供しましたので、お知らせいたします。

歌集『飛鳥』(ひてう) 原口嘉代子

母は、現在80歳、佐佐木幸綱門下の短歌結社に入会して23年になります。
夫(私にとっては父)を悼む挽歌を中心に、
子ども時代から現在に至る人生の折々について、これまで詠んできた歌を編んだ歌集です。

歌集名「飛鳥(ひてう)」は、王維の漢詩から採ったものです。

華子岡(かしこう) 王維
飛鳥去不窮
連山復秋色
上下華子岡
惆悵情何極

飛鳥(ひちょう)去って窮(きわ)まらず
連山(れんざん)復(ま)た 秋色(しゅうしょく)
華子岡(かしこう)を上下(じょうげ)すれば
惆悵(ちゅうちょう)して 情(じょう)何(なん)ぞ極(きわ)まらん

秋の山に飛び去る鳥の姿をながめていると、
亡くなった人への思いは限りない、という意味の詩です。
この五言絶句の世界にふさわしいものを、と
朱色の紙を巻いたようなクラシカルなデザインにしました。

私が提供したのは、2019年ごろ取り組んでいたシリーズ、
和紙にインクの染みを広げ、その上にドローイングを描いた作品です。
思考がつながり飛躍し重層的に重なっていく様子を表現したもので、
歌集のテーマである、さまざまな思いが重なる長い時間の記憶とも呼応すると自負しております。

1年半前から妹と三人、母の家に集まり、あるいはオンラインで会議を重ね、
内容もカバーも含め何度も打ち合わせしてきましたので、
届くまでずっと緊張し通しでしたが、
想像以上の出来上がりに嬉しさと安堵感がこみあげているところです。

帯文を書いてくださった佐佐木幸綱氏は、私の大学時代のゼミの教授でもあり、
母と私二人にとって万感胸に迫る歌集になりました。

現在、出版社の新刊案内に掲載されていますので、どうぞご覧くださいませ。


ながらみ書房 原口嘉代子歌集『飛鳥』

原口嘉代子歌集『飛鳥』(ひてう)
出版社:ながらみ書房
発行日:2024/09/01
作者:原口嘉代子
定価:2,860円(税込)
判型:A5判上製カバー装
頁数:224頁
ISBN978-4-86629-337-0
https://www.nagarami.org/

(ながらみ書房 ウェブサイトより)

君よりの長き手紙を読むやうに炉辺(ハース)にひとり炎見つむる

曽祖母も祖母母我も張り継ぎて障子よ清し百年の家

紀の国を初めて旅し木と水と石より成れる土地と知りたり

名詞が多く、なかんずく固有名詞が多い歌集だからだろう、めりはりがきいて輪郭のすっきりした歌が多い印象である。歌集には、家族をはじめ多くの人名が歌われ、多くの地名、多くの具体的事象が歌われている。あくまでも具体的な点が特色である。さらに私が注目したのは、作者の好奇心の強さと、行動力である。縄文杉を見るためにわざわざ屋久島まで行った歌、髙橋真梨子の最後のコンサートに行った歌などがあって驚かされた。
—————————————————–佐佐木幸綱 帯文

屋久島の真青の海を胸張りて直線にとぶ飛魚の群

秋植ゑの葱すんすんと伸びあがる春雨降らす空に向かひて

ひもすがら古本屋街歩きにき一冊の本とラドリオの珈琲

廃線の転轍機ギと動かして幻の汽車来さしめむかな

腕組みてかの月見台に立ちをらむ文届けかし雁に託せば


提供作品:
原口比奈子《思考が流れ、飛躍し、重なる》部分雁皮紙、インク 97×150cm 2019

知人の個展の小冊子に寄稿しました

友人の個展の記録小冊子に寄稿しました。

『花輪奈穂写真展「gathers and spillages 〜付加体と礫〜」』

表紙は花輪さんの写真作品。縞々になった地層が盛り上がっています。迫力!

主な内容 (52ページ)
・はじめに
・misaki photo exhibitionとは
・花輪奈穂写真展「gathers and spillages 〜付加体と礫〜」の記録
・現代美術作家 原口比奈子寄稿「私たちは地層を見るのではなく地層を体験する」
・作家トークその1「場と制作、そして鑑賞の『気持ちいい』負荷」
・お茶会で聞いてみた「三浦の好きな場所」(グーグルマップ付き)
・展示のあけすけ(準備の流れ、かかったお金、トラブルなど大公開)
・作家トークその2「観る作る発表する、の私たちの場合」
・グラフィックデザイナー 矢口莉子寄稿「あるものと、あたらしいもの」
・あとがき
・謝辞


私は、この一連のプロジェクト「misaki photo exhibition」の 第2回目の花輪奈穂展について寄稿しました。

図録には、作品の写真もたくさんあるのはもちろん、
トークイベントの書き起しや写真のワークショップの様子もあって、
会場の臨場感が伝わってきて読んでいて楽しい。

そもそもZINEそのものが変わった形をしている。
ジャバラ状になった表紙のオモテウラに写真作品が大胆にレイアウトされていて、
中に、綴じられた別の冊子がゴムではさまっている。
個展では、鑑賞者がかがんだり、首を斜めにして観る作品が会場に展示してあって、
このZINEも同様に、斜めのタイトルは頭を横にして読み、ャバラを開き、裏返し、
というように、読者に特別な運動を要求している。

私の原稿のレイアウトもそうだ。
斜めになった三浦の地層のようなデザイン。
褶曲するようにズレて始まる文頭の文字。

不思議なことだけど、この小さい図録の作品を観ていると、
花輪さんの個展に行ったような気持ちになる。
たぶん、掲載されているっていうより、再構成されていると感じるのだと思う。

それは主宰の阿部さんの狙いどおりだったなあと思うと、
この冊子にかける彼女の思いにジーンとなる。

そういうものにかかわれて本当によかった。

 

私が寄稿した原稿「私たちは地層を見るのではなく地層を体験する」
拡大すると読めます。

 

詳しくはこちらに書きましたので、あわせてご覧いただければ幸いです。
※現在、クラウドファンディングは終了しています。

寄稿した写真展記録小冊子のクラウドファンディングが始まりました「misaki photo exhibition」

 

フィンランドセンターの編み物クラブの6周年パーティ

そういえば6月、ちょうど都立図書館での展示が終わったころ、
フィンランドセンターの編み物クラブの6周年パーティがあった。
すっごく大きいケーキが2つ、ワーオ!
みんなでお皿に取り分けて食べていると、
ぐりとぐらのカステラを森のみんなで分けているシーンみたいだった。
Onnea!(オンネア フィンランド語で「おめでとう!」)

 

ケーキ入刀しているのはセンターの所長。
私に本当に良くしてくれた所長がこのたび、任期満了で退任と聞き、寂しくなって急に投稿した。
コロナ禍を私が乗り越えられたのは、じつに編み物クラブと所長のおかげだったから。
月1回のZoomのクラブが私の励みになり、編み物に没頭した。
まっすぐしか編めなかったのに、あの難しい靴下が編めるようになったのはすごいことだ。
今やセーターだって編んじゃうんだからね!

毎回、おやつとコーヒーを頂きながらのフィンランドの文化についてのレクチャーがあり
(カルダモンを加えるコーヒーとシナモンロールが絶品!)、
ムーミンの原著の朗読や、
毛糸メーカーのNOVITA社の担当者からのホットなニュースも楽しかった。
フィンランドのアートレクチャーや文学トークイベントにも参加した。
何より、いつも明るくパワフルな所長の姿を見ていると、
こちらの鬱々とした気持ちがいつのまにか晴れ渡ってるのだった。
元気出していこ! 未来は明るい! まっすぐ歩いていこう! そう思えた。

トーベ・ヤンソンの夏の別荘へのヴァーチャルツアーも忘れられない。
20年以上前、それをテーマに作品をつくったことがあった。
いつかフィンランドを再訪したら、絶対に行ってみたい。

前にフィンランドに実際に行ったのはアアルト建築ツアーで、
当時はトーベ・ヤンソンもムーミンもほとんど知らなかった。
たまたまタンペレ市を訪れてムーミン美術館にも寄ったのがきっかけだった。
美術館が良かったから、帰ってきて読んでみたら、おもしろくておもしろくて
夢中になってわああっと読んだ。


お土産にいただいたバラとムーミンの毛糸も。

都立図書館での展示と、クラブで編んだ「ストロムソセーター」とその編み図を作ったニット作家本人によるWSはこちら。

フィンランドセンター編み物クラブによる「グラニースクエアプロジェクト」が東京都立中央図書館内で展示されます

展示観てきました! 私たちの編み物クラブによる「グラニースクエアプロジェクト」

strömsö sweater

セミの羽化観察大会

今夏の観察日記第2弾、セミちゃんの登場である。

裏庭には、蝉の幼虫がはい出たあとの穴がよく開いている。
でも、セミが羽化する瞬間を見たことがなかった。
成虫がミンミンジージーツクツクとなき、ブブブっと飛んでいくのはよくみても、
どこにいるかわからない、しかもちょうど今年成虫になる年数の幼虫を土中から採集するのはむりだろう、
つまり飼うのはむりだと思っていた。

裏庭 シイの木の根元 アジュガのそばにある蝉穴 こんなのがよく見られる

ところが、今夏、それを人生ではじめて目撃することになった。

家人が帰ってくると玄関前にひっくりかえってもぞもぞしている茶色の虫を見つけたという。

あ、これは蝉だ、それも羽化しようとしている!と瞬間的に思ったそうだ。
わたしからすると、ゴキブリとよくまちがわなかったものだ、というような形状だが、
アゲちゃんのことがあるから、これは羽化を手助けするべきだと思ったそうだ。

そう、アゲちゃんの、羽化する前と、サナギになる前の様子に似ていた。

焦っているのに、体が丸くて重くて、なかなか起き上がれない。
しかも、どこからやってきたのか、玄関前のタイルの上だから、
自然の中ならあるはずの雑草の葉っぱやら茎やらこんもりした土もなく、
なにもつかまるものがなくて、足をバタバタするばかり。
こりゃ一大事、とユリの支柱にしていた細い竹を引っこ抜き虫に近づけると、つかまった。
そのままそっと、裏庭まで運び、金木犀の枝に載せてやったというのである。

そんなわけでうちの裏庭で急遽開催された、セミちゃんの羽化観察大会である。
世間ではパリで開催される世界規模の体育大会を見ているときに、うちでは、庭先でセミの羽化を見るということにあいなった。

発見が7月29日18時ごろ。まだ明るい。竹の細枝をよじよじと登っていく。
茶色いゴキブリに似ているが、体は厚みがあるのが大きな違い。
前2本が大きくカニのような手をしているので、全体にちいさいエビのようだ。
竹はつるつるしているのか、やりにくそうにしているのもかわいらしい。
竹を寄りかからせた金木犀の枝にうまく移ってくれた。
葉に邪魔されながらもうろうろと登っていく。

アゲちゃんのことがあったので、気に入った場所を探しているのだろうと察せられた。
途中、アリが体を這いまわるのをいかにもいやそうに手で払ったりしている。

わたしたち人間も、寄ってくる蚊を同じように手で払う。
一緒だ。
蚊取り線香を焚きたかったが、セミちゃんも追い払っては元も子もない。
我慢することにする。かゆい。

もう、その辺にしとけよ、と思うのだが、気に入らぬようで、細い枝に移ったりしている。
葉っぱの裏に取り付いて、さかさまになったりしている。やめとこうよ、それは。

ここにするかと決めて静かに落ち着いたところへ、
またもやアリがやってきて背中をはい回るので嫌気がさしたのか、
またもぞもぞと移動を始める。
そんなちいさいアリなんかほっとけ、と思うが、人間だって蚊がいたらやだもんな。
だが、そんなことでタイムアップになっては、とこちらはハラハラする。
体が固定しないまま羽化がはじまっては失敗するかもしれない。

私もちょっとは手伝おうと、アリが這い上がるのを、指で払ったりしていたが、
テキは2匹、アリの道ができているのか、いつのまにかやってきている。
セミちゃんはアリを払っているうちに、手が離れておっこちてしまった。
あっ!

どこいった、おい。
草をかき分ける。
いない。
むやみに動いて、セミちゃんを踏んづけてはと思い、動けない。

おいおい。どこだどこだ。

いた。いたが、またひっくり返っておる。

大慌てで、雑草の茎で救出を試みるも、セミちゃんの足の力はわりと弱いらしく、
簡単に手が離れてしまうのだ。体が重いのかもしれない。
何度かトライしても失敗しているうちに
あまり人間が手を出すのもよくない、足が折れたら大変だ、自然に任せようと思って見ているうちに、
なんとかこんもりした土を背に起き上がれた。よしよし。

そして、またけなげによじよじと登っていく。
これぐらいの太さのある幹にはうまく手がかかるようで、スムーズである。
アゲちゃんはわりとなんにでもくっついていけたが、セミちゃんはそうでもないようだ。
なにしろ、セミちゃんは地上の経験がほとんどないものな、、、。

目を頼りにしていないのか、目隠しされているかのように、足でペタペタ触って幹の形状を確かめている。
セミちゃんが登っているのは、枯れて切ってしまった高さ140センチほど金木犀の幹で、てっぺんは平らになっている。
妙だと思ったのか、足でペタペタとまたも確認作業に入っている。
うん、そこはさー、平らなんだよね、もうその先はないんだよー、と伝えたいのだが、目ではわからないのだろうか。
セミちゃんはてっぺんまでいくと、これも気に入らないのか、また下りていく。
さかさまになって、ごそごそしたのち、また正常の位置に戻ると、ここに決めたようだった。
アゲちゃんの時もそうだったが、てっぺんから5センチほど下の位置が好きなようだ。
羽根を乾かして、その先に歩いて行けるようにだろうか。
だとすると、距離を測っていたのか、頭が良い。

だが、ここで、人間のほうが暑さと蚊でタイムアップ。いったん家に避難した。
われわれがひっくり返ることになっても、自然に任せてたら死ぬことになる。

家で調べると、6時から7時の間に1時間かけて脱皮をし、さらに3時間かけて羽根を乾かすという。
むむ、今7時半か、いまが脱皮のチャンスか、あわてて、長袖を着て蚊よけスプレーをして、再度挑戦ダ。

以下、写真多めでコメントのみで書こうと思う。


19:25 急に暗くなってきた。

エビに似ている。そうだ、セミの抜け殻ってこんなんだったけね。
静かにしている。光を当ててもどうということもなさそうだ。
調べると、走光性という、光があるほうが脱皮するのによいらしい。
なんでだ? 電灯がある現代ならいいけど、大昔なら焚き火とかか? 
人間がいるほうがいいってこと? 
なぞは深まるが、まあよい、観察するのに光厳禁でなくて、助かった。

20:08 もぞもぞ動いている。皮を脱ぐ準備か。背に身との空隙が白く見える。

頭の部分が割れて、動かしている。背が盛り上がってきた。

20:13 背が完全に割れた。

なんか出てきた。

目が、目が出てきた!デカ目だ、かわいい!

ちいさいカエルみたい。

 

おっと、手を抜くのか? そっといけよ。

いった―――! だが、アゴが大変なことになっておるぞ。大丈夫か。
うさぎみたいになっておる。ちいさい羽根かわいいなあ。

20:34 完全にそっくり返っておる。すごい腹筋だ。
よく見ると、何本かうすい糸が体を支えている。
足の殻かとおもったが、あれは糸だ。
そりゃそうか、落っこちちゃったら羽化失敗だ。うまくできてるもんだ。
アゲちゃんは口から糸を1本出してくぐっていたが、セミちゃんはこういう感じか。
たまに休んでいるのもかわいい。そうだ、慎重に行けよ。

ついにお尻で支えるのみ。すごいことになってきた。
頭に血がのぼっておらぬか。
たまに動かなくなる時がある、
心配する。死んだのではないよな!

20:38 ついに起き上がった!
これからどうするつもりだよ、
そのままバック転かそれとも驚異の腹筋を見せるか、と
SASUKEの解説のようなツッコミをしていたが、
2回に分けて腹筋でヨッと起き上がった。

ついでに、お尻もつるりと殻から抜いた。
ああ、羽根が、羽根がーーー!
これは、あれだ、クリオネちゃんだ、陸の妖精だ。

白い体に、黒いつぶらな目、薄青のちいさい羽根。
想像上のアニメの動物のようだ。赤い斑点がほっぺたみたいだ。

自らの抜け殻に手をかけておる。おおおお。

前足はなにか濡れているようで全体にしっとりし、先端に水滴様のものがついていた。
だが、それは粘性のあるものだったようで、もう用なしと足でよけるとコロリと玉になって転がっていった。
まだ強度がない足でうまく立つ工夫だと思われる。
よくできてる。とここでも思った。

20:42 羽根がじょじょに大きくなっていく。
アゲちゃんは、羽根をたたんだ状態だったが、
セミちゃんは、どうやら、じょじょに風船に空気をいれるかのように羽根を大きくさせていっているように見えた。

くっ、かわいいぞ。

 

ターキッシュブルーの羽根が美しすぎる。フラジャイルな美しさ。
葉脈のような筋が見える。

 

21:47 脱皮して1時間、羽根がさらに大きく、茶色に変色してきた。
もう立派に蝉っぽいかたちになったな。
よくがんばった、えらかったな、セミちゃん。

これで、羽化観察大会も終わり。
アゲちゃんと違って、羽化直後に飛び立ちはしないそうだ。
朝、また様子をみることにするが、まあ、飛んで行ってもいいや、と思う。


朝、4時。すっかり成虫に。羽根はこんなに大きく、茶色に、美しくなっている。
昨日、もう立派に成虫だ、などと思ったが、これほど羽根が大きくなるとは!
昨夜は体のほうが大きかったのになあ。
蝉でも蝉でもセミちゃんはナニゼミなのかなと思っていたが、
こう見てみると、アブラゼミだったということが判明した。アブちゃんだ。

朝、7時。まだいた。なんと庭石の間にいた。
挟まってるのか、暑さを避けてるのかわからないが、ブブっとたまに動いていたので、元気そうだ。

昼、もういなかった。

アゲハチョウの幼虫を育ててみることにした(10 完)

アゲハチョウの幼虫を育ててみることにした(9)

続き。ここ数日忙しくて、とうに放していたのに、書いていなかった。

実は、羽化した当日、寝てると思ってそっとしておいたが、1時間ぐらいして、そっと覗いてみると、こんなふうに羽根を広げていた。

あれ、と思ってみていると、歩いて移動しはじめた。
よく見てみようと、部屋の電気をつけると、急にバタバタと羽ばたき、活動的に。
箱の縁辺りでバタバタしている。

あ、こりゃ、外に出たがっているな。

そう思い、もう夕方だったが、放そうと決意した。
今夜半より大雨との予報で、明朝やみしだい放そうと思ってたが、
朝から用事で出かけねばならぬので、背に腹はと思い放蝶は家人に頼もうと思っていた。
今のほうがいろいろ都合がよかった。

夏至から一夜あけた夕方18時半、まだ外は明るかった。
箱を裏庭に持ち出し、アゲちゃんが生まれ育った山椒の木のそばまで持って行った。

アクリルのフタごしに見えるアゲちゃん。バタバタとしている。

フタを開けると、もぞっと足で箱を抜け出て、白い空にむかって、東のほうへ飛び去った。

あっというまだった。

巣立ちってこんな感じかと感激した。

その姿は立派に蝶だった。

 

夏至の夜は、魔法が強くかかるという。
アゲちゃんが飛んで行ったのも、そんな雰囲気が残るゆうべだった。
しばらくすると夕闇がやってきて、雨が降り始めた。
夜半、雨は強くなり、どこか雨宿りしてくれていればいいのだがと思った。

家に戻り、薄く作ったはちみつ水を、アゲちゃんが結局飲まなかったので、私がおいしくチュッといただきました。

 


アゲハチョウは、普段はひらひらと速く、予測がつかない動きをするので写真どころか動画も撮れない。
腹が白いことや、羽根がおもてうらで模様がまったく違うなんてことも知らなかった。
飼育することで、アゲハチョウについてよく知ることができた。
常日頃、めんどうだ、めんどうだとばかり言っている私にしては、ちゃんと育て上げて、自分でもちょっとおどろいている。

といって、簡単だったかというと、そうでもなく、今回はビギナーズラックだったと思っている。
調べてみると、外で飼うと面倒はないけど、病気や天敵にやられることがあるから、
成功率を上げるには5齢まで待たず、早めに家にいれたほうがよさそうだった。
サナギになってどこかにいってしまうことだってあるから、家にひきとったタイミングもよかったし、蛹から寄生虫が出てくることがあると戦々恐々としていたが、上手に蛹になってくれた。
羽化の際も、窓がわりにつけたラップ部分に足を滑らせてどうなるかと思ったが、
段ボールの壁は意外に足が引っかかるようで、枝状の棒はなくても羽化するスペースが取れたので、それもうまくいったことだった。
何より、羽化の瞬間に立ちあえてうれしかった。

今後は飼う予定はないので、飼育箱はすでに解体し、次に見つけたらすみやかに近くの柚子の木に移そうと思っているが、その後も、柑橘系の街路樹を見かけるたびに、かじられた痕がないか、どこかにアゲちゃんがいないか、探してしまう。

はげちょろけの山椒も数日たつと新芽がそこここに出て、元気よくやっている。


と、じわじわとアゲちゃんのいない暮らしに慣れてきた1週間後、庭に出ていたら、
なんとアゲハチョウが、ゆっくり私の背のほうからゆらゆらと飛んできて、
もう少しで肩にとまりそうなほど接近していた。

アゲちゃんなの?

元気な姿を見せに来てくれたのかと、またまた感動する。

蝶の恩返し、あるかもしれぬ。
絶対に見ないでくださいといって、ほっそりした白い服の美女だか紳士だかがある夜、戸をたたいたら・・・!
ぜひ、背に乗せてひとっ飛びさせてもらいたい。


2024年
5月31日 3齢と思われる黒い幼虫を発見する
6月3日 5齢になる
6月6日 臭角を観察する
6月11日 家に引き取る ワンダリングを観察する 
6月12日 朝、前蛹になる 夕方、蛹になる
6月22日 16時半、羽化する 18時半、放蝶する

アゲハチョウの幼虫を育ててみることにした(9)

羽化したーーーーーー!!!!!

いきなり羽化した。

そうとは聞いていたが

ほんとうに急にあっというまに羽化した。

成功!成功!成功!うちのアゲちゃんはよくやった! WE DID IT!


まず、今日の動きを振り返ろう。

昨日までは変わらず緑色のサナギだったアゲちゃんは、今朝9時ごろ、うっすらと黒ずんでいた。色が深緑になってきたというか。
いよいよか、とも、これが病気だったら、とも思う。期待と心配。ぬか喜びしたくない気持ち。

それから30分ほどすると、いよいよ、羽化の前兆とされている、黒く変色していた。
これはいよいよだと思う。そうなると、もう今日だ。
今日はいちにち、飼育箱から離れないぞと思う。
というのも、サナギから出て羽をひろげるのは、あっという間のことらしいのだ。
ちょっと目を離したすきに、羽化してた、というのはよくあることらしい。

といっても、それから6時間待った、とかとも聞くので、すぐってわけでもないから、とにかく目を離さないようにと思う。

いよいよ、羽根の色が透けて見えてきた。頭の部分も透けている。
体も透けてきた。緑だった腹も、黄色くなってきた。

昼ぐらいは、20分おきにタイマーをならして見ていたが、
3時もすぎると、動きもないので、目の前に箱をおいてスマホを見たりしていた。
と、少し気が緩んでいたころのことだった、バリバリっと乾いた音がした。

すわ、一大事!

あわてて、立ち上がって箱の中を見ると、アゲちゃんがぼとっと床におちて、もぞもぞしている。スマホで動画を撮るのもあるから、焦る。

あっというまにサナギのフタをあけて、寝袋からすすすーっと出て行ったようだ。

それで落ちて、羽根を広げるのにちょうどいい場所を探すのに手間取っている。
飼育箱のラップの部分が滑るのか、足場が良くないようだ。
割り箸をそばにおいてやろうと画策しているうちに、
段ボールの壁に落ち着いた模様。
がんばれ、がんばれ。思わず声を出して応援する。

くちゃくちゃだった羽根をゆっくりと広げる。
ハエの親玉か峨のようだったのが、蝶っぽくなってきた。
羽根を広げるのと同時に、口吻を呼吸をするように口から出している。
丸い輪が大きく、小さく、大きく、小さく。
羽根も広げて、閉じて、広げて、閉じて。

ついに、羽根の全容があきらかになった。
羽根は白地に黒い線が走り、ブルーと所どころ琥珀色のような朱色が入っている。まさに、アールヌーボー。
体はすっかり白い。黒い線がすっと一本はいっていて、あれが、サナギのときに背中に見えていた線かと思うと感慨深い。こんな白い体だったんだね、君は。
目は黒く、顔と胸は白く、細い黒い足がすらりと伸びている。
白と黒がくっきりとして全体に貴婦人のよう。

羽根を広げたり閉じたりして、背中からも羽根を見せてくれる。
背中から見る羽根とは、デザインが少し異なる。
黒い線は太くなって、こちらは色がない。
つまり、表と裏が同じ幅の、切り絵のようではない、ということだ。
影絵を裏からみているようだ。

羽根をゆったりと広げて壁に休んでいる。
ああ、君はなんて美しいんだ。
ちょっと泣きそうになる。
君はうちの山椒を食べて、こんなに立派に育ったんだね。

 

羽化がはじまったのが、4時20分。
そして、5時。
すぐにひらひら飛ぶのかと思ったが、そのまま羽根を閉じて、静かにしている。
どうした、羽化が上手くいっていないのか、羽根が傷ついているのか。

あわてて調べると、夕方からは蝶は寝るらしい。
放してもそのへんで寝ているだけらしいので、
すぐに放蝶するつもりだったが、今夜一晩は、うちで休ませることにする。
暗いところに飼育箱をそっと置いておく。
いちおう、はちみつを溶いた水を置いておいた。
人の手を貸してやって給餌する方法はあるらしいのだが、
なにぶんにも慣れていない者がよけいなことをして傷つけてはと、そのままそっとしておくことにする。最後までなにかと心配が尽きない。

とにかく、WE DID IT! Excellent! といっていいのではないか。

 

 

抜け殻になったサナギ。このサナギ自体の色で白い腹が黄色く見えていたのかとわかる。

アゲハチョウの幼虫を育ててみることにした(8)

アゲちゃんがサナギになってから4日目、
順調に眠っている。
体長は2.5センチ。
5齢のときは4.5センチだったから、ほぼ半分になった。
色は若干白っぽく、カサカサ乾燥して枯れ葉をまとっているかのような外見だ。

庭にアゲハチョウが飛来する。
あれは、アゲちゃんのお母さんなのか、それとも、
いずれアゲちゃんのつがいの相手なのか、と考える。

数年前に読んだ『チョウはなぜ飛ぶか』( 日高敏隆)によると、
アゲハチョウは足の先に目の機能があって、
足でさわってつがいになる相手かどうか見るらしい。

産卵するのに、樹種をどうやって判断しているのだろうか。
色だとすると、緑の木はたくさんあるし、むずかしそうだ。
においだとすると、うちの今の山椒のようにはげちょろをもし選んだら、まずいことになるだろう。
うちの山椒は結局、葉の量はギリギリ間に合ったが、すごくちいさい木で、
近くにミカンの木はない。餓死の可能性もあった。結構賭けだったと思う。
それに、わたしがみつけたときは、一頭だったが、
卵は複数生みつけられたはずだから、
他のきょうだいたちは死んでしまったのだろうと思うと、
本当にアゲちゃんは、生き残るのが大変なんだなと思う。

ところで、サナギの形で眠っているアゲちゃんを見て、
記憶はどうなっているのだろうと思う。
羽化すれば、芋虫だったときとは身体の形も食べ物もまったく変わる。
もう山椒は食べないし、口吻で液体を吸う。
自分の生まれ育った山椒の木の場所は覚えているのだろうか。
それとも自力で新たな山椒をさがしに、旅に出るのだろうか。

そうだ、羊水に浮かんでいたときの自分だ。
あのころ、食べ物も呼吸のしかたも今とはまったく違っていた。

アゲちゃんは棒でつついても、いやがるでもなく逃げるでもなく、
何を考えているのかわからない様子で、
哺乳類を飼うのとは根本的に違うのだった。
だが、そんなことを考えると、虫とも多少は共感ができる気がする。

アゲハチョウの幼虫を育ててみることにした(7)

夕方、アゲちゃんが、糸をかけていた!

朝には、まだ芋虫だったのに、出かけて帰ってきたら、急にサナギの形になっていた。

ちいさく縮んで、前屈姿勢になり、糸を口から出して、輪にして体を支え、それが前蛹といわれる形で、
その後、脱皮して蛹になる、と成長過程は把握していた。

だが、こんなに早く、前蛹からサナギになるとは思っていなかった。

ふと見ると、床になにやらごみのようなものが落ちている。これが脱皮した皮か?
ちいさくなって、1日後には、もう脱皮して蛹になるのか。
2日ぐらいは、前蛹でいると思っていた。

それにしても、サナちゃんは、ずいぶんちいさい。

ちょっと小さすぎるんじゃないか。
やたら早くさなぎになってるから、成長が不十分なんじゃないか。
いやいや、こんなものなんだろうか。
やはり写真はサイズを誤解させるな、と再び思う。

最初はサナギは、芋虫の色、鮮やかでしっとりした緑色だったが、数時間たつと、
からからに乾いて、色が変わっていった。

こんな細い糸でよくもまあ体を支えるもんだと思う。
飼育箱のフタを開けるときも、振動を与えぬよう、そおっとする。
体長を測りたいが、万が一にも落ちてはならぬと思い、まだできずにいる。
いやいや、自然状態のほうが、風もあるし雨もあるし、多少の振動ぐらいへっちゃらなんだろうけども、
あまりにフラジャイルな様子に、こちらも及び腰である。

糸をかけるところも見たかったなあ。口から糸を出すのだそうだ。そのあとはくぐるのだろうか。
脱皮するときも、糸のところでひっかからないように皮をうまいぐあいに脱いでいくという。見たかったなあ。
それでも、サナギになるところをつぶさに観察できて、楽しい。
やはり芋虫の状態で引き取ってよかった。

 

前屈姿勢をするアゲちゃん。頭と同じぐらい、ほぼ2頭身になるほど、身体を縮ませている。

目を離したちょっとの間に、サナギになっていた。

翌朝からはいつも庭にアゲちゃんを見にいっていたルーティンがなくなって、ちょっと寂しい一方、いつでもいなくなってる覚悟をせずにすむので、安心もしている。

10日程度、このままでいるらしい。
あとは、羽化を楽しみに待つのみだ。

アゲハチョウの幼虫を育ててみることにした(6)

そろそろ蛹になるのだろうか、と様子を見に行く。

いない。
いなくなった。
いない。
どこにもいない。

蛹になるためには、ワンダリングという行動をするという。
柚子の葉っぱのうらも、近くのヒサカキの幹も、ミョウガの枝も、しゃがんで下から舐めるように探す。
いない。
さなぎになる前は液状のフンをするという。そんなのがないか地面をみるが、ない。
山椒の葉の上に、固形のフンがあるだけ。
フンの上方の本体があると思うも、上にはなにもない。
これまで地面に落ちていたから、
上に空のみがあるのがまた、鳥にやられた証拠にも思える。
さなぎになるため歩き回ってどこかにいってしまったのかもしれない、と強く自分に言い聞かせたが、
本当は鳥にやられたと認めたくないのだ。
とにかく、喪失感でいっぱいだ。
せっかく、飼育箱も用意したのに、無駄になってしまった。
カラの飼育箱を見るとは、なんてつらいことだろう。
ぐずぐすしてないで、早く引き取ればよかったのに。
お昼を食べてから、なんてのんびりせず、先に見ればよかったのに。

最近、スズメが2羽うちの庭によく来ている。さっきもバタバタ飛んで行った。あいつらか。

そう思って、もう一度見る。
あっ、いた! 思わず声が出た。

いたよ、いたよ。

隣りのミョウガの茎にぽちょんとつかまって、こっちを見ていた。
おい。こんなところにいたのかよ。
動いちゃダメっていったでしょ。迷子を怒る母親のようなことを言う。

もうね、こんな思いはしたくないよ。いますぐ、家に引き取る!
だいたい、こんな目立つところにいて、あぶないったら。

それで、急遽、引き取ることになった。

ミョウガの枝ごと、剪定ばさみでバッサリ切って、家に持ち帰る。
ミョウガの枝につかまっていたということは、もう食べ物は食べないのだろうと思ったが、
もしごはんが食べたくなるかもしれないからと、柚子と山椒の枝とともに小瓶に水をいれて、箱の真ん中に置いた。
蛹がつかまれるように割り箸を立ててみる。

アゲちゃんは、割り箸を見つけるも、どんどん登ってその先になにかないかと、
頭を振り乱している。荒ぶるオッコトヌシそのもの。
割り箸の先の、箱のてっぺんまでのぼっていって、縁を歩いていく。
速い。
君がこんなに動くのを初めてみたよ。

あわててフタをすると、少しのすきまから頭を出して、脱走しそうになる。
このまま、蛹になるのにちょうどいい場所を探しつづけるのだろうか。
割り箸は何本か垂直に立ててみたが、斜めのも作ってみる。
マスキングテープで固定する。

急に環境が変わったのが嫌なのか、ウロウロしている。
山椒の葉っぱを近くに置いてみるも、まったく眼中にない。
それどころじゃないんで、という調子で、葉っぱを踏み越えて歩いていく。
荒ぶっているアゲちゃんは、すごく大きく、すごく伸びて、
頭を振り回して、近くに何か棒状のものがないか探している。

背中の中心に、ホログラムのように、線が浮かび上がっては消える。
心臓のように、ドクドクしている。

とにかく、すごい。

 

フタを開けていると、フタの縁を歩き回って外に出るだけでキリがないので、
フタをしてしばらく様子を見る。
やっと30分すると、徘徊をやめ、壁にぴったりとくっつき、
あっという間に、ちいさく、ちいさく、ちぢんでいった。

すごく、すごく、かわいい。

 

飼育箱の窓からのぞくと、飼育箱の天井から3センチほど下の壁にちいさく、つかまっている。
あんなに大きかったのに、蛇腹を極小に縮めて、半分以下の長さになった。
あの長い身はどこにいってしまったんだろう。
あんなに動き回っていたのがうそのような静けさ。
ここが気に入ったのだろうか。
棒じゃなくてただの壁なんだが、大丈夫だろうか。本人がいいなら、いいんだが。
飼育箱の窓からのぞくと、飼育箱の天井から5センチほど下の壁に、つかまっている。
蛹になるときはあまりさわらないほうがいいそうなので、そっとしておく。
蛹になる前には前屈姿勢をとるそうだが、アゲちゃんは今のところ、ぺったり壁に沿っているのみ。

このまま10日ほど、飲まず食わずでここにいることになる。
だから、あんなに食べまくったのか。冬眠前の熊と同じだ。
おかげでうちの山椒は丸裸になった。
昨日も、餃子の薬味として食べたかったが、アゲちゃん優先、人間後回しで我慢した甲斐があった。ぎりぎり、間に合った。
山椒には申し訳なかったが、まだ新芽も出ているので、なんとか復活するだろうと楽観している。

とにかく、うまく家に引き取れて、ひとまずほっとする。
このまま蛹になってくれればいい。寄生バチも入り込むスキはない。
だから、いつのまにか、いつ家に引き取る問題も解決した。
このまま蛹になるなら、フンを洗い流すとか、フレッシュな枝を切らすな、とかいう面倒もなくてよくなった。いちばんよい時期に引き取れたと思う。
どうも私はそんなことが多い。先々のことを考えすぎて不安を増幅させては悩んでばかりいる。
こんなふうに簡単に解決するはずなのに。

アゲハチョウの幼虫を育ててみることにした(5)

5齢になって7日目。そろそろ蛹になるはずだが、まだ気配はない。
ただただ、たくさん食べている。
これまで食事するところは見なかったのに、ここ数日、私が見ているときにも食べている。
はじから一方向に向かって食べていく、スイカ食い。芝刈り機方式でもある。
何かに似ていると思ったら、そうだ、アリクイだ。
蛇腹状のからだをくねらせて、龍にも似ている。これにひげを生やしたら、と夢想する。

カシカシ食べて、そのあと満腹を味わうかのように、頭をもたげてゆっくり空を見上げている。
動かないので、山椒のトゲがのどにひっかかったのかと、またまた心配になるが、そういうものらしい。

ついに素手でも触ってみた。
触った感じは、さらさらしていて、どうということもない。
臭角を出したが、またもや3回目には出さない。
1日あたりの角出しの回数が決まっているのかと疑う。
家人は、あまりいじめなさんなという。
いじめてはいない、観察であると抗弁しておいたが、
本当の敵襲の時のために温存してほしいので、これ以上は触らないことにする。
鼻をくんくんさせてみたが、とくににおいは感じられなかった。
残念である。

体長は4センチになった。
節も実は7、8個になっていることがわかる。
模様だけでみると3節だが、
遠くの葉っぱを食べるために背伸びしているところを見るに、
7,8個に分かれていた。ずいぶん、大きくなったなあ。
あたまでっかちだったのも、身体の大きさが頭に近づいて、
今では芋虫っぽく、全体がほぼ同じぐらいの大きさになった。

山椒はずいぶんなくなったので、万が一のことを考え、
夜のうちに、柚子の枝を3本、わかりやすいようなところに立ててみた。
しかし、翌朝見てみると、依然山椒の枝のところにいる。
柚子、気に入らなかったのか。
柚子の葉が多少かじられているようにも見えるが、最初からそういう枝だったかもしれないので
確かなことは不明である。夜だったから、どんな枝だったかよく見なかった。
山椒が間に合えばいいのだが。

蛹になる前は、気に入った場所をさがすために、ずいぶん歩き回るそうだ。
いつ、家に引き取ってもいいように、観察のための箱を作った。
役に立ちますように、と思う。

目下の議題は、
1)蛹になる前に家に引き取るか、
2)蛹になって数日かたまってから家に引き取るか
である。
1は、どこかにいって見つからない問題の回避 だが、うまく蛹化するのか
2は、寄生バチに寄生されたらどうしよう
なやましい。いまのところ、そっとしておくことにする。