投稿者「hinako」のアーカイブ

小学生の美術館ツアーとワークショップ企画

小学生の美術館ツアーを企画する。

どこで何をやるのか、会期と場所と内容を調べる。最初はそんなに気もなかったのに、調べているうちに、企画としてはムリかなあ、けどいいなあ、観たくなってきたなあ、ヨシ個人的に行こう!、という展覧会がいっぱいになってしまった。

高畑勲は絶対に行く!と前々から考えていて、今夏、それに加わったのが、松方コレクション、ミュシャ、田名網敬一、萩尾望都、できたらボルタンスキー。わわわ。行けるかなあ。これはあれだ、夏休みの宿題をためちゃうあの感覚だ。あれもこれもと欲張って結局、、、とはしないぞ。

 

実際の企画としては、レオ・レオーニ展にした。WSでモノタイプの技法を取り上げて、充実した内容にして重量級に格上げ。

発表するとかなり反応がいい。レオ・レオニ好き!とかあの『スイミー』?と目を輝かせている。「教科書に載ってた」と言うので、何年生の教科書なの?と聞くと2年生とのこと。やはり教科書に載ると強い。

WS「コーヒー染めで物語の地図を描こう」

コーヒー染めで物語の舞台の地図を作るワークショップを行いました。

はじめに物語の地図を既存の児童文学で例示します。エルマーのぼうけん、くまのプーさん、ハリー・ポッター、ムーミン。みんなも思い出してみて。お話にはシーンがあって、どういうところで物語が進むか舞台ってあるよね。自分の書いた物語の舞台となった場所の地図を作ってみよう。

1)コーヒーを鍋で煮だします。沸騰したコーヒー液に紙を入れて、5分程度煮ると、いい感じに色が染まっています。いい匂いがしてきた! お鍋を使ったりお箸を使ったり、お料理みたい。

2)アイロンをかけたあとは、2度付け。こうするとシミができます。地図の地形になったり、古い秘密の文書っぽくなったり。

3)乾かしている間に、割り箸ペンを作る。鉛筆みたいに削るんだけど、削ったことあるかな? 練習してから、さあチャレンジ。カッターで削るのがちょっとむずかしかったけど、コツをつかんだ後はうまくできた!

4)自分で書いた物語の舞台について、割り箸ペンにインクをつけて紙に地図を描く。割り箸ペンはね、プロの画家も使う技法なんだよ、と話す。同じ技法で描かれた絵を見せると、「あ、このあたり、ガサガサして割り箸ペンっぽい」と絵を観る目も違ってきています。

どうだった?

「コーヒーとか割り箸とか身近なもので工作したのが楽しかった」「なんでコーヒーで染まるんだろうと思った」ふむふむ。理科の実験っぽかったかも。

できた物語の地図

雪うさぎキット

雪が降ったよ。

これは私が作ったちっちゃいうさぎ。

雪の予報を見て、雪うさぎを絵画教室で作ろうと思ったけど、積もるほどじゃなかったから、「雪うさぎキット」をお土産にあげた。明後日雪が降ったらお家で作ってね。

南天の葉と赤いビーズの「雪うさぎキット」南天の実が今年はならなかった。

岩絵具作りの実験

東山魁夷展のための芸術鑑賞WSとして、日本画の絵の具がどのように作られているか、実験しました。

日本画の絵の具は石でできてるんだよ、とマラカイト(孔雀石)の原石を見せます。緑色と縞模様、それに、ホラこの断面を見て、キラキラしてるよね、これが絵をキラキラさせてるんだよ。水で溶けるから絵の具になるんだよ。

と言いながら、実は、この実験、私自身やるのが初めてだったので、果たしてうまくいくかどうか緊張感もありました。わたしもやったことないんだ、と言うと、ちょっとびっくり顔。よくわかんないから、少しずつトライしてみようよ。

最初、普通の石をかなづちで叩いてみる。固い。全然砕けない。マラカイトはかなづちで叩くと、やわらかいのがわかる。細かく砕けて、粉ごなになる。水を入れて混ぜるとすぐに溶けて、きれいな緑色の水が! ちゃんとできてるよ! 膠を使うのはちょっとむずかしいので、かわりに水で溶いたボンドで描いてみました。きれいな緑色が和紙についています。よく見るとちゃんとキラキラしています。

庭に出て金づちでコンコンしたり、色水を作ったり、みんなと一緒にやったり、いつもと違う体全体を使った。終わった後、スカッとした顔をして跳ねながら帰っていくみんなを見ると、楽しさや不思議さがちゃんと伝わったんだなと思って私もうれしくなる。

石から絵の具を作る実験

上から

「マラカイト原石」
「石をかなづちで砕く」
「砕いた状態」
「水を入れると解けて緑色に」
「できた絵の具で和紙に描く」

子どものための美術館鑑賞の大事なコツ

夏の美術館ツアーは、いわさきちひろ展を観に東京ステーションギャラリーへ。

引率者として、楽しいとか勉強になったとかよりも、安全に行って帰ってくることを最大の目標にしている。夏は暑くて気分が悪くなる可能性が一番高い時期。初めて美術館に行くという子もいて少し緊張した。なんにせよ安全第一。

ところで、この企画のことを話すと、実に100人が100人、いいですね〜と本気で言う。そのいいですね〜には、いくつかの意味があるのだろうけど、いずれにせよ、美術館に行くのはいいことだという共通の認識があることは明らかだ。

WSとか子どもガイドもいいけど、美術館のエントランスにちょっと水を飲んだりできるスペースがあればいいのに、といつも思う。

今回は、入館前は東京駅のサウスタワーへ向かうグランルーフで、退館後は東京駅の駅舎前のベンチでおやつタイムをとったけど、雨だと本当に困る。ちょくちょく休憩を取って体力回復することが美術館鑑賞を成功させる意外なコツだったりするのに。

それで保護者にこう言う「美術館は運動会だと思ってください!」だから足元はスニーカー。

芸術鑑賞レッスン いわさきちひろとの出会い「ちひろの技法で絵を描こう」

主宰する絵画教室で、今度いわさきちひろの美術展を観に行くので、その事前レッスンを実施しました。

まず画集でちひろの絵を鑑賞。ちひろはね、書道も習ってたんだよ、それで絵の描き方に書道の方法を持ちこんだんだ。

にじみ効果のあるたらしこみの方法を解説する。

ほら この絵のここのところ見て!この方法を使って描いてるよ。みんなもおんなじようにやってみよう。

きれいなのができた! あまりたくさんの色を使わないのがコツだよ。それと紙を動かしすぎちゃうと混ざって1色になっちゃうよ。

だいたいわかったら、次は女の子の髪の毛を同じ技法で描いてみようか。ちひろは子どもの絵を9000枚以上描いたよ。

 

 


それで私が描いた絵。にじんでいい感じだ。

教室では私も一緒に描いてる。これがお手本っていうんじゃなくて、ただ一緒に描く。髪の毛が乾いたら赤い髪飾りも描くんだーとか言いながら、そんなふうに楽しんでいるのを見せるのも指導だと思って。

次回は、海の絵を描こうかな。

ちひろについて私が明確に自分で選んだと思うのは、『赤い蝋燭と人魚』だ。それと『絵のない絵本』。思い出すだけで胸が締め付けられる。

その後、大人になって読んだ「靴を買ってあげましょうか」と言った話しは、まさに恋に落ちる瞬間、映画に出てきてもいいぐらいいいセリフだなあと思う。たまにつぶやく。ベタな表現だけど、キュンとする。

☆アナログハイパーリンクな読書 いわさきちひろ →『赤い蝋燭と人魚』小川未明 『絵のない絵本』アンデルセン

「ぼくの手」原稿

火山のふもとの小さい家。
少年が庭先で絵を描いていると、突然目の前の山が揺れ始める。
「噴火だ!」
少年は絵の具をバッグに放り込み、家の中に駆け込む。
出てきたときには背中に母親を乗せている。走り出す。
母親は負ぶわれながら背後の山を見上げる。
「お山のてっぺんが燃えているよ」
ドーンという大きな音がして地面がぐらりと揺れる。
少年はバランスをくずし地面に手をつく。
「お母さん、しっかりつかまって!」
少年はわき目もふらず走っていく。

二人の背後にドロドロに溶けたマグマが勢いよく迫ってくる。
もう少しで少年の足元に届きそうだ。
少年は地面を蹴り上げ跳躍する。溶岩がはじける、火の粉が舞う。
「ちゃんとつかまって!」
赤く猛るマグマは生き物のように二人を飲み込もうと大きな口を開けている。
マグマの手が少年の足をつかみかける。
母親は目をぎゅっとつぶる。
少年はまた強く地面を蹴る。足音が消える。
母親はつぶっていた目をそろりと開ける。
目の前に、少年の肩と、肩から生えた白い羽根と、その向こうには空が広がっている。
「あれえ、お前、空を飛んでいるよ!」
少年の手が羽根になって、羽ばたいている。
少年は母親のほうを振り向いて笑う。

眼下は一面火の海だ。
赤く焼けた石が降る中、少年と母親は空を飛んでいく。さらに高く高く昇っていく。
やがて、白い雲の上に出る。
雲海のかなたに一つだけ塔のようにとがった山の頂が見える。いくつも明かりが見える。

○1日目
薄暗い教会の中では、大勢のけがをした人々が毛布にくるまっている。
町の人がスープを配っている。
目を閉じて横たわる少年の隣りに母親が座っている。
母親は少年の口元にスプーンをあてがう。スープを流し入れる。のどが上下に動く。
二人の顔は煤で黒く汚れ、ところどころ血がついている。服は火の粉で焦げ破れている。

○1週間後
少年と母親は頭に包帯を巻いている。
母親は避難者にスープを配る手伝いをしている。
「さあ、お食事ですよ、まずは体をあたためましょう」
少年は小さい子どもたちを羽根先でなでて寝かしつけている。

○1か月後
少年と母親はこざっぱりとした格好をして、包帯はもうしていない。
二人は町の人と立ち話をして小さく笑いあっている。
もう一方の隅で、少年を指さして噂話をする人がいる。
「見てごらんよ、薄気味悪いねえ、アレは何かい、何かの呪いなのかい?
羽根をむしったら人間の手が出てくるか、はたまたただの鶏肉かね」
「シー、やめなよ、あんたも呪われるよ」
恐怖の目をして子どもを自分のほうへ引き寄せる女がいる。
少年は、羽根を背中のほうへ固くたたんで、隠そうとする。

○2か月後
「お母さん、町はずれに小さい家を見つけたんだ、二人で暮らそう」

○3か月後
母親は家の前で鍬をふるっている。
少年は、背中に羽根をたたんだまま、肩で不器用に手押し車を押している。
車ごと地面に転倒する。

○半年後
家の前の畑には青々とした野菜が育っている。
少年は青い顔でうつむき、羽根になった手を見つめている。
「ぼくの手。絵を描いてみんなを喜ばせていたぼくの手。
でも絵を描いても噴火を止めることはできなかった。今はその手さえぼくは失ってしまった。
助けてもらったお礼に絵を描こうにも、筆が握れない。絵描きになる夢も絶たれた。
ただ生きていくだけの人生に何の意味があるだろう。
僕とお母さんを救ってくれたこの羽根、今ではただの役立たずだ」
少年は羽根になった手を柱に打ちつける。絵の具を地面に投げつける。
母親は物陰からそれを見ている。

翌朝、二人でごはんを食べていると母親は言う「お前、その羽根だけどね、それで絵を描いたらどうだろう。
いやいや、今までのような方法じゃないんだよ。その羽根の先に絵の具をつけてね、家の壁に直接描くんだよ」
少年は「え」と顔を上げる。
「具体的なやり方は私にはわからないよ、それはお前が工夫したらいい。
お前が呪われているはずがない。どころか、こんなにきれいな白い羽根だ、きっと祝福だろうよ。
いっそ天使様の絵はどうだろう。家の壁全体に描いておくれ」
少年の頬に徐々に赤みがさしていく。

○1年後
教会の塔の前に少年が立ち、絵の具がついた羽根を大きく広げている。
羽根が撫でるとたちまち絵が描かれていく。
教会前の広場に集まった町の人々は塔を指さして話している。
「なんとありがたいことだ、天使様が天使様をお描きになっている!」


『早稲田現代文芸研究08』( 2018年3月15日発行 編集発行 早稲田文芸・ジャーナリズム学会)

「第八回多和田葉子&高瀬アキワークショップ報告」(松永美穂教授 著)中、WS参加者の作品として掲載された。


ワークショップ「言葉と音楽 Vol.8」 2017年11月14日(火)16:30~18:30 早稲田大学小野記念講堂にて

多和田葉子と高瀬アキによるワークショップに参加

(c)早稲田大学文化推進部

第13回大黒屋現代アート公募展 第一次選考通過いたしました

「第13回大黒屋現代アート公募展」第一次選考通過いたしました。

板室温泉 大黒屋 保養とアートの宿 http://itamuro-daikokuya.blogspot.jp/2017/12/13.html?m=1

応募作品は、黒いアクリルパネルにドローイングを描いた、鑑賞者が映り込む作品です。

二次審査で入選すると、大黒屋サロンにて展覧会に出展できる。そうなったらいいなあ。

まずは新年に嬉しいお知らせ♪

大黒屋現代アート公募展

http://www.itamuro-daikokuya.com/art/contribution/

応募作品《線の向こうの私》部分アクリル、マーカー

映り込む作品なので写真撮影に苦慮します。

「ダダをこねる/02」出演お知らせ 3331アーツ千代田にて

急な告知ですが、2017/11/19、東京神田の3331アーツ千代田にて下記のイベントでプレゼンターとして出演いたします。

自作朗読をする予定です。

観覧には入場券が必要ですが、招待券が数枚手許にありますので、ご連絡いただければ差し上げます。ぜひいらしてください。


「ダダをこねる/02」三分間一本勝負!

(アーティストイニシアティブ・コマンドN 20周年企画展「新しいページを開け!」企画)

2017年11月19日(日)16:00-18:00 3331アーツ千代田にて

http://www.3331.jp/schedule/004070.html

日程:2017年11月19日(日)
時間:16:00-18:00
料金:無料
備考:※要展覧会チケット(観覧)
会場:3331アーツ千代田1F メインギャラリー内

【プレゼンター】

金藤みなみ(アーティスト)

芳賀尚賢(サラリーマン)

高田隆平(unit.maker)

福澤 貴之(ekoD Works)

ヤス・アラタ・タルパ

なかちゃん

うどよし(わよう書道会)

小林真比古

宮本和之(対岸の雑草)

原口比奈子(アーティスト)

榮木将文

永田勝也(粋プロジェクト)

森岡晴彦(美術家)

世界の終わりについて

この度、原口比奈子が下記【ワークショップ「言葉と音楽 Vol.8」】で自作の朗読をいたします。
どなたもご観覧いただけます。是非ご来場ください。

高瀬さんのピアノとのセッションも、多和田さんからの講評も楽しみ。

数年前から出たい出たいと切望していた憧れの場についに参加できて心から嬉しい。
同じ分だけ不安も。

2017年秋   原口比奈子


多和田葉子・高瀬アキ パフォーマンス&ワークショップ

1. パフォーマンス「世界の終わり」 2017年11月13日(月)18:30~20:30

いつのまにか「戦後」が「戦前」になるような、歴史が後戻りしているような不思議な気持ちになる今日この頃。ヨーロッパでも、国境を超えた共同体の試みが、さまざまな困難に直面しています。そんなアクチュアルな状況を見据えつつ、ベルリン在住の作家・多和田葉子とピアニスト・高瀬アキが、今年も刺激的かつ思索的な舞台を展開します。

2.ワークショップ「言葉と音楽 Vol.8」 2017年11月14日(火)16:30~18:30

「世界の終わり」をイメージしつつ書いた詩や散文、もしくはこのテーマに関連した新聞記事を詩にした作品を3分以内で朗読しつつ、参加者が音楽とコラボします。


開催日時:
1. パフォーマンス「世界の終わり」2017年11月13日(月)18:30~20:30(開場は30分前)
2.ワークショップ「言葉と音楽 Vol.8」2017年11月14日(火)16:30~18:30(開場は30分前)

会場:
早稲田大学小野記念講堂(早稲田キャンパス 小野梓記念館27号館地下2階)
〒169-0071 東京都新宿区戸塚町1−103 大隈講堂の目の前です。

料金:
入場無料・予約不要・全席自由(先着200名) 一般の方も入場可能 ※未就学児入場不可

出演:
多和田葉子(作家)・高瀬アキ(ジャズピアニスト)

問い合わせ先:
早稲田大学文化構想学部 文芸・ジャーナリズム論系 松永美穂研究室 tel:03-5286-3637
早稲田大学文化企画課 tel:03-5272-4783(月~金 9:00~17:00)
e-mail:art-culture@list.waseda.jp

多和田葉子・高瀬アキ パフォーマンス&ワークショップ 2017

 

ここ数年毎年、二夜とも観覧しているが、いつもものすごく面白い。ぜひ行ってみて!
早稲田大学に行ってみたい方もぜひ。小野梓記念館は大隈講堂の目の前。小野梓と大隈重信は大の仲良しで、今も隣りにいるのかと思うとほほえましい。