workshop」カテゴリーアーカイブ

子どものためのシャガール オペラ『魔笛』夜の女王とパパゲーノの衣装をデザインしよう

全国の学校の教職員、図書館司書むけに芸術鑑賞のワークショップを実施しました。
教室で実施したシャガール作品を鑑賞するためのレッスンを、
ワークショップとして発表しました。
■タイトル 「子どもの心に本を届ける」全国集会分科会B
■日時 2011年10月1日
■場所 明治学院大学(東京都港区)
■主催 読書のアニマシオン研究会

参加者は、音楽を聴きながら絵を描いたり、ペアになってお互い講評したりするうちに、「美術館に行きたくなった」と評判で、絵が苦手な人も楽しそうに絵を描いていました。

子ども向けの芸術鑑賞ばかりでなく、 多角的な表現力を養う授業として、また、
コミュニケーションを通じ互いに尊重する学級づくりとして活用できると評価され、
実際に、都内板橋区の小学校で授業として実施されました。

シャガール「シャガール作品とオペラ『魔笛』との出会い」(「夜の女王」の衣装デザインをしよう)

(1)本、画集を読みきかせて作家について知る
シャガールってどういう人だろう?

シャガールはロシアで生まれた。
ベラという奥さんをとっても愛していて、ベラと自分をモチーフに恋人たちの絵をたくさん描いているよ。(『シャガール―わたしが画家になったわけ』)
あざやかな色使いのため「色彩の魔術師」ともよばれている。まるで夢の中にいるような不思議な絵は世界中の人々から愛されている。(『シャガールとあそぼう!』)
絵画だけではなく、教会のステンドグラスやオペラの舞台美術も手がけた。
とくに、王子様や魔法使いが出てきたり動物達が踊ったりする愉快なお話の『魔笛』は、ファンタジーの世界を描くシャガールとぴったりだった。

(2)CDを聴いて、オペラの登場人物「夜の女王」を知る
シャガールは、オペラ『魔笛』の衣装デザインをした。衣装デザインというのは、演劇の役柄にふさわしい衣装を考えること。夜の女王は力のあるこわいこわい魔女。まずは夜の女王のアリアを聴いてみよう。
♪夜の女王のアリア「復讐の心は地獄のように胸に燃え」
地獄の復讐がわが心に煮えくりかえる
死と絶望がわが身を焼き尽くす
(中略)
聞け 復讐の神々よ 母の呪いを聞け

(3)ワーク
じゃあシャガールと同じように、「夜の女王」の衣装デザインを描いてみよう。

夜の女王は力のあるこわいこわい魔女なんだよ。
夜の女王は「夜」をどう表現する?
女王らしさをどう表現する?
こわさをどう表現する?
手に何をもつ?
どんな魔法が使える?
場所はどういうところ?

こんなデザインができた! みんないい感じ! 夜、魔法、女王、怖い感じ、出てる!

森の中に夜の女王がまほうをつかってたたかっています。森はまっくらでなにもみえません、でも女王はたたかっています。手にはなんかいもかみなりをだせる玉をもっています。かみなりはとてもつよくあたるといしきがなくなってしまいます。

 


夜の女王は、夜けらいたちと散歩をしています。夜の女王は、いつも空をとんで散歩をします。とぶと光がスカートから出てきます。マントにクリスタルをはめて、うでの所は、サファイアとルビーをはめこんでいます。スカートはサファイアです。つえは、いろいろなじゅもんをとなえられます。


ある日の夜女の人が野原に来ました。その人の洋服はむらさき色ばかりでした。その人はまん月に見とれていました。手には月のような玉を持っていました。少し時間がたつときゅうに何かを言い出しました。するとまん月は青色にかがやきあの月のような玉はうかび上がって空のかなたへ飛んでいってしまいました。そしてかわりに女の人の手には黄色く光る石がありました。


ある日夜の女王は、世界中のまほうがのっている本を持って、夜の町へでかけた。一つまほうをためしてみた。そのまほうは、かみなりをおこすまほうだ。その夜、町は大嵐になった。


夜、毎日女王さまは、スーッとみずの中の城から出てきて、星をつくっている。ざいりょうは、ただのこんぺいとう。それをつえでまほうをかけて、きらきらとかがやかせ、そらへとはこんでいる。女王は、人がくると、水の城へともどっていくので、だれ一人みたことがないのだ。


【解説】

○ワークショップの目的、動機ときっかけ

タミーノやパミーナも加えて好きな役柄をとも思ったのですが、タミーノやパミーナは、それほど特徴が際だっていないので、ただの王子と王女の衣装になってしまいそうだったのでやめました。『魔笛』の中で言うとザラストロもいいのですが、筋を知らない人に説明するにはむずかしい役だと思います。

○所要時間 1時間×1~2回

○応用例

パパゲーノも特徴的なので、同じワークショップができます。大人向けに実施したことがあります。鳥刺し男を鳥にするか人間にするか解釈によってデザインが大きく変わっておもしろかったです。

また、シャガールの作品は布を使ったコラージュ作品なので、ワークショップでもコラージュ技法を加えてもいいでしょう。

このワークショップから、オペラへのイントロダクションになることもあると思います。

○参考資料

『魔笛』(原研ニ解説)
『シャガールとあそぼう!』
『シャガール わたしが画家になったわけ』(ビンバ・ランドマン作・絵)
『フランスの公共図書館 60のアニマシオン』(ドミニク・アラミシェル著 辻由美訳)
『シャガール展カタログ』(芸大美術館)
DVD『歌劇 魔笛全2幕』(DVD ハンブルクフィルハーモニーオーケストラ)
CD『歌劇「魔笛」全曲』(モーツァルト作曲 ニコライ・ゲッダ他歌 オットー・クレンペラー指揮 東芝EMI)

○実際にやってみた感触

ワークショップ後に、美術館でシャガールの作品を観たのですが、「画集で観るよりキラキラしてる!」「布が貼ってある!」と発見がいっぱいありました。「感じ出てるなぁ」と嘆息する子も。