北欧の夏至祭をムーミンと祝う -飯能の旅

 

夏至の日、埼玉県飯能市にある
北欧のライフスタイル体験施設「メッツァビレッジ」に行くことにした。

「メッツァの夏至祭」というイベントをやっている。
フィンランドは遠い、日本にいながら北欧の夏至祭を楽しめるなんて、ぜひ行きたい!

「メッツァの夏至祭 2025」
https://metsa-hanno.com/lp/midsummer2025/

数年前、ここで編み物クラブの周年パーティがあった。それ以来2回目。

もともとここには宮沢湖があり、その風景が北欧に似ていて、
以前からムーミンの作者ともゆかりがあるというので立地が決まった。

ここにいると、フィンランドの湖水地方にいるみたいだ。


実は夏至の日の直前、フィンランドセンターの前所長が主催する編み物クラブに参加した。

クラブは、フィンランドの文化についてのレクチャーを聞きながら編み物をする、というスタイル。

今回は、
フィンランドFazer(ファッツェル)社」 のチョコレートを頂きながら、
夏至祭の過ごし方についてお話を聞いた。

家族で集まって、花冠をかぶって、ブルーベリーパイや新じゃがを食べる、
新じゃがは出始めだから、高いのよ。

かがり火を焚いて、夜じゅう過ごす、夏が短い北欧では、とくに重要な祝祭。

そんな話を聞いて、じゃあ、メッツァに行こう、となった。

 


メッツァとはフィンランド語で森という意味。その通り、メッツァビレッジは森の中にある。

北欧各国の国旗の色のリボンが巻いてあるリースに迎えられ、広場にはメイポールが立っている。

夕方には、湖のほとりでかがり火がたかれ、周りでフィンランドのフォークダンスを踊るという。

ダンスグループによるパフォーマンス

パフォーマンスの後、みんなで輪になり
ジェンカから始まり、3曲ほど講師に教わりながら踊った。

ペアで踊ったり、みんなで手をつないで大きい輪を作ったり、
楽しいなぁ、青空の下でフォークダンスなんて、中学校以来。

 


去年、フィンランドダンスの講座が大使館で開かれ、
日本の盆踊りと同じく男女の出会いという側面もあった、と講座で知った。

その時の講師が今日、パフォーマンスに出演していたので、一緒に写真を撮った。

「フィンランドダンスの講師です、埼玉から来ましたー」なんて冗談好きな人。

地域ごとに特徴がある貴重な民族衣装

 


かがり火は、ダンスの間、いよいよ燃え続け、とても大きい炎になった。

ムーミンの挿絵は、よく光と影が描かれ、とくに長い影が印象的。

その日は夏至で、5時でも明るく影は濃くはなかったけど、
大きな炎のまわりで踊っていると、
ムーミンのお話の世界にいるようだった。

このかがり火を絶対見たかった。

点火直後

燃え盛る大きい

『ムーミン谷の彗星』(ヤンソン作 下村隆一訳 講談社文庫 1978)

 


湖のほとりの、薪ストーブのあるレストランで食事をした。本当にここ外国。

雰囲気あるなあ、冬もよさそう。

 


湖の反対側に、灯台が見える。
「ムーミンバレーパーク」の施設で、
私たちムーミンファンにはおなじみ、
『ムーミンパパ海へいく』に登場する。

本の表紙そのままの風景に見入ってしまう。灯台ってロマンがあるよな。

『ムーミンパパ海へいく』ー本当の自分を見つける物語(「MOOMINS」)
https://www.moomin.co.jp/news/blogs/97923

ある編み物クラブの日、この本の原語のスウェーデン語の朗読を聞きながら、
編みものをしたことがあった。

作者のトーヴェ・ヤンソンが、自身の父を亡くした後に書いた作品で、
その前までのムーミンシリーズとは様子が違っている。

怒りっぽくなったムーミンパパはあるとき、ここで暮らすため、
住み慣れたムーミン谷を出ていく。

パパは一体どうしちゃったんだ、と
朗読を聞いていたクラブメンバーのあいだで物議をかもしたのも、
なつかしい思い出。

 


今回はムーミンバレーパークは行かなかったけど、
メッツァの敷地内からも、ムーミンの世界は楽しめる。

ムーミン谷の橋

『ムーミン谷の彗星』(ヤンソン作 下村隆一訳 講談社文庫 1978)

水あび小屋

『ムーミン谷の冬』(ヤンソン作 山室静訳 講談社文庫 1979)


今年はムーミンの小説出版80周年の年、
“The door is always open”のメッセージに思わず泣きそうになった。

メッセージは、ムーミン屋敷の扉がいつでも開いていることにちなんだもので、
いつでもだれでもウェルカムな姿勢を表明している。

思えば「ムーミン」には、偏った考えの、へんてこな生きものたちがたくさん登場する。
互いに極端な意見を言っては衝突するのだけど、
ママが「いいのよ」とやさしく受け入れてくれるのだ。

私も読んでいて、とてもこんな人とは仲良く食事などできないなと思うけど、
ママがいると、なんとなくみんながくつろいでしまうのがムーミン屋敷。さあお茶でも飲みましょう。

私も仲間に入れてもらえそうだ。

一方、『ムーミン谷の彗星』は原爆の恐怖を書いたと言われている。
80年経ったが、それは過去のものではない。皆で夏至を祝えればいいのにね。


では最後に、フィンランド語で夏至祭おめでとうと言って終わろう。
「Hyvää juhannusta! ヒュヴァ ユハンヌスタ!」