5月に、アトリエの庭に鎌倉・明月院と同じ品種のヒメアジサイを植えた、と書いた、
その後の話である。
小さい苗だったが、地植えをするとちゃんと根付き、青い大きな球状の花を咲かせた。
アジサイは、咲いてから日数が経つにつれ、淡い色から濃い色に変化する。
明月院ブルーと名付け、毎日、色や大きさを見に行っては楽しむ日々である。ヤッタヤッタ。
アトリエに「安行四季咲きヒメアジサイ」を植え付けた日
ツボミが大きくなった
咲き始め 少しブルーに
満開に 小さいほうのツボミも開いた。
うちの庭にはいままでアジサイがなかったが、
気づけば、あっちにもこっちにも、アジサイを植えている家はたくさんある。
近所に小さい庭なのに4株も植えている家があって、みな色が違う。
長く咲いていいお花だよね、
うちのような小さい庭でも植えられるかしらね。
5月にユリが咲いて、それが終わると、花壇が寂しくなるから、
アジサイが咲いたらきっとすてきよね。
そんなことを考えていたところ、この6月、浅草の長國寺へ行くことになった。
ほうろく灸(きゅう)というのに興味があったのだが、
同時にアジサイ市が開かれるという情報をキャッチした。
よい鉢があれば買ってもいいが、シーズン真っ盛り、高ければ買えないなあ、
見るだけでも、と思って出かけた。
気をつけて見回すと、
アジサイ祭、アジサイ市というのはこの時期多くの場所で開かれている。
知人が東京10社巡りをしていたら、白山神社でちょうどアジサイ祭やってたよ、
と写真を送ってくれた。
境内が華やかだねえ、みんなアジサイ好きなんだねえ。
さて、長國寺である。
https://otorisama.jp/
昨年はこの時期、神社に夏越の大祓に行ったのだが、
今年は日程的にちょっと行けなそうだ、
夏越の大祓は6月30日と決まっているから。
それで、今年は、この「ほうろく灸」の祈祷を受けようと思ったのである。
ほうろく灸(きゅう)祈祷とは、
経文が書かれた書いた平たいお皿「炮烙(ほうろく)」を頭の上に載せ、
そこに火をつけたもぐさを置きながら、祈祷を受ける、というもので、
暑気払いの効果がある健康法だそうだ。
難しいことをいえば神社と寺とは考えが違うのだろうが、
身体健全、無病息災、
この時期を元気に乗り越えるという意味では同じ気がする。
よし、今年の夏はこれにしよう。
お寺に着き、祈祷会に申し込む。
ほうろく灸祈祷会
https://otorisama.jp/ikiiki-ajisai/houroku/
お皿の上に梵字が書いてある紙を乗せて、
紙ごとひっくり返して頭に乗せ、もぐさを乗せてもらう。
頭ー紙ー皿ーもぐさ、という順番に。
頭のてっぺんとはすなわち百会(ひゃくえ)とよばれるツボで、
そこでお灸を焚くわけだから、
効能がありそうだ、ワクワク。
結構熱くなるので、無理せず離してもいい、けど火がついているから気を付けて、
ずっと手を上げて疲れちゃったときは、そっと膝の上に移動させてね、
お寺だから修行と思って我慢しなくていいからね、
お坊さんからユーモラスなレクチャーがあり、さっそく始まった。
だが、熱さよりもお灸の珍しさよりも、何より驚いたのは、祈祷の激しさである。
その日、アジサイ祭りとして、地元グループによるステージが本堂のすぐ後ろであった。
スピーカーから元気な歌が聞こえる。
ううむ、これを聞きながらとなるとどうなるのか、
ナムナムオーオーパッキャラマドとかなったらと少し心配になったが、
実際に祈祷が始まると、そんな雑念は吹き飛んだ。
5、6人のお坊さんに我々十余名は囲まれ、高らかな読経が始まった。
なんみょうほうれんげきょう、わあわあわあわあ・・・
思わずギョッとするほどの大音量である。
大声の読経は迫力があり、外の歌声はかき消された。
そのうち、火打石が打ち鳴らされ、一人一人の前で火花が飛び、
仏具からはカーンカーンと音が鳴る。おそらく木剣と呼ばれる仏具と思われる。
後ろからは火焔太鼓、鉦鼓が打ち鳴らされ、あの巨大なおりんも活躍している模様。
その間も、激しい読経は続いた。
一番高位のお坊さんは恰幅がよく、
僧衣を着てなければラグビー選手かと思うほど。
オペラ歌手のように体じゅうから声が響いていた。
本堂が揺れている。
こりゃ悪霊も逃げ出すな。私も逃げたくなったぐらいだもの。
途中で参加者の氏名が順番に読み上げられる、私の名前も。
お釈迦様か日蓮上人にお願いしてるのかな、この人をよろしくーとかなんとか。
お灸があるから効きそうだ、などと不届きなことを考えていたが、
いやいや、この祈祷こそ、と思った。
そのうちに、頭は本当に熱くなってきて、少しきな臭い。
昔、祖母が家の2階の部屋でうつぶせになって、お灸をしていたのを思い出した。
熱くないの、と思ったけど、祖母の背中にはお灸の痕がついていたから、あれは熱かったはずだ。
(長谷川町子の『いじわるばあさん』の背中にもお灸の痕があった、当時はみんなやってたのかな)
頭上を見ることはできないが、もぐさが燃えているのだろう。
おおおお、効いてる気がする。
するが、やけどすることもあるらしいので、少し浮かせてみた。
20分ほどで終わり、梵字が書かれた紙で体中をなでまわし、お寺に預けた。
梵字が体に沁み、耳なし芳一になった気分だった。
その後、客殿に案内され「薬膳きゅうり汁」を頂いた。だしがおいしい。
キュウリは体の熱を冷まし、とろっとしたクズは血行促進。
あじさい守と木札にはちゃんと氏名が書かれている。
どこに置いておけばいいんですか。
見えるところで、高いところがいいでしょう、とのこと。
そのあとは、あじさい祭を見て回る。
驚いたことに、端からどんどん売れていく。
鉢を背負って持って帰れるように、リュック持参のおばあちゃんもいた。
値段は高いのではと思ったが、とんでもない、市価より格安、1500円から売っていた。
それなら、と良い色のアジサイを一鉢買い、さっそくアトリエの花壇に植えた。
濃いピンクの色で、アトリエが明るくなった。
暑い日が続く。
買ったアジサイには「長國寺さん」と名前を付けて、
「長國寺さんに水をやらないと、明月院ブルーはどうしてる」と言って毎日世話をしている。
身体大事にこの夏を過ごしましょう。
「長國寺さん」とあじさい守り