フィンランドセンターの編み物クラブに参加するようになったのは2020年5月。
コロナ禍でオンラインで開催されるのを知ってから。
展覧会が2つとも休止したり休館になって落ち込んでいた時だったから、
編み物に夢中になった。
昨冬、クラブ内のコンペにエントリーしたのが「ハート模様のバラクラバ」。
コンペのテーマはクリスマス、指定色はクリスマスカラー、ということだったので、
色は赤と白の毛糸を引きそろえてハートを編み込むことにした。
バラクラバは、ネックウォーマーがそのまま頭のフードにつながっていて、
帽子とマフラーが一体になったもの。
首と頭にすきまがなくて風が入らず、耳も覆えるので、本当にあたたかい。
今年の冬は寒かったし、とくに初詣の時には大活躍だった。
寒い中かぶってでかけても、参拝の時にはパッと後ろに外せばよくて、
首にひっかかってるから、混雑した行列の中でも、
帽子みたいにどこかで落とすってこともない。
で、また寒くなったらひょいっとかぶり直す。
ただ、これをかぶっている人をあまり外では見ないので
(編み物界でもハイブランドでも数年前に大流行したというのに!)、
ヘンテコに見えないか不安になった。
黒いダウン、それもバイクのライダーか?ってぐらい
ガッチリしたデザインのものを着こんでいるせいもあって、
マスクマンのプロレスラーのように強そうに見える。
目出し帽に見えないように、防災頭巾に見えないように、
慎重にバランスを見て、デザインを考えたつもりなのに、
やはりそう見えたらがっかりする。
外からはどう見えるんだろう。
それを先日、クラブに持って行き、
「あかずきんちゃんみたいでしょ、like Little Red Riding Hood」と発表したところ、
赤ずきんちゃんはフィンランド語で「punahilkka」と教えてもらった。
プーナヒルッカ。フィンランド語は響きがかわいい。
クラブのメンバーからも口々にかわいい、似合うといわれ、
話したことがない人からも声をかけられた。
赤ずきんちゃんみたいね、マッチ売りの少女みたいね。
気をよくして、別の会合にも着て行ったところ、
かわいいけど、もしかして手編みなのか、どうやって編んだんだ、難しそうだが、
とずいぶん好評だった。
よかった、ヘンテコどころか、これはかわいいものなんだと安心した。
赤ずきんちゃんといえば、私のたからものが、この絵本。
(『あかずきん』大塚勇三やく 堀内誠一え 福音館書店 1970年)
2歳のクリスマスプレゼントに母が買ってくれたもの。
この絵本でわたしは、このあかむらさきの「ぶどうしゅ」はなんておいしそう、
いつか大人になったら「ぶどうしゅ」を飲むんだ、と思っていた。
どんな味なのかしら、きっと、甘くて濃くて、おいしいぶどうの味がするはず。
大人になってワインを飲んだが、「これがあれか」とワクワクしたのに、
思ったような赤い色でも味でもなく、大層がっかりしたことがあった。
現実的に言って、想像上の味とぴったりのはずがないのだが、
この絵本を見ると、いまでもこのぶどうしゅへの憧れが、心の中に湧き上がってくる。
どこかにあの、夢の、ぶどうしゅがあるはず!
10年以上前、フランスにワークショップの研修に行ったときに、
パリの図書館のワークショップで取り上げられていて、
これは絶対に手に入れねば、と思った「赤ずきんちゃん」がこちら。
『le Petit Chaperon Rouge』
(Warja Lavater 絵 Aderien Maeght Editeur社 1965年)
ウォーリャ・ラヴァターによる、蛇腹式の絵本で、
文字はなくて、色違いの丸だけで赤ずきんやおおかみや森を表現している。
俯瞰した図がスタイリッシュな作品で、
物語の中の時間を強く感じさせる絵本。
丸で描かれる物語を美しいなあとじゅんじゅんにページを開いていくと、
突如現れる、おおかみにくわれるシーンは、
筋をわかっていても、おそろしくてぞっとする。
この本を出版したのは、マーグギャラリー。
子ども向けのワークショップでも、
絵本を通じて芸術を教えようとするパリの司書さんの心意気を感じた。
南仏にあるマーグ財団美術館、いつか行ってみたい。
マーグ財団美術館