スニーカーのなる椿の木

椿は、冬の終わりにピンクの花が咲いては散って咲いては散って、
寂しい時期に目を楽しませてくれる。

そうなると、いつもは来ないメジロが番で来たり、ヒヨドリがそれを追い払ったり、
にぎやかな庭になる。

春の雪にも映える。

あたたかくなって剪定をした。

切った枝は、木のぼりに使う縄梯子の一段として使う。

まだ花がついているうちに切るのがよいタイミングで、
だけど、寂しいので一つだけ花を残した。

すると、数日後、葉の先からピョンピョン若葉が出てくる。

黄緑色が目にまぶしい。

 

普通、若葉は、古い葉の先につく。

こんなふうに。

だけど、

幹を見ると、幹から突然に、芽が!

切られて、焦って芽を出したのかしらと思う。

こんな武骨な固い幹から、柔らかな芽を出すとは、

植物の力とはなんとパワフルなことかと思う。

椿は、こうした成長をみせるものらしいが、

これをみると私はいつも、

ブルーノ・ムナーリの「どこのいえにも変わり者が一人はいて」

というのを思い出す。

変わり者が出てきたな、いいぞ、いいぞ。

 

春になると光がまぶしくて、それまで気にならなかったスニーカーの汚れが急に恥ずかしく思う。

ゴシゴシあらって、椿の枝にかけて乾かす。

ピッピの庭の木には、レモネードがなる。

わたしもピッピと同じように、スニーカーのなる木と来客を驚かしたい。


ブルーノ・ムナーリ『木をかこう』

アストリッド・リンドグレーン『長くつ下のピッピ』