謎、というのが私は好きみたいだ。
その割に、自分はワトソンなので、全然解決しないのだけどね。
今回の謎は、犬筥(いぬばこ)についてである。
こないだ、さいたま市岩槻の人形博物館で展示を観ていて、ふと思った、
犬筥って以前は普通に雛段にあったお道具らしいけど、
最近、見かけないよね。
正直、私は展示を観るまで知らなかった。
犬筥とは、安産、多産の象徴である犬の形をした張子の箱。
単体としても飾られたが、雛人形とともに飾られることも多かったようだ。
岩槻人形博物館
https://ningyo-muse.jp/
男雛、女雛の膝元に、かわいいのがちょこんといる。あれが犬筥である。
日本で初めて人形にサインを入れた
久保佐四郎によるミニチュア雛段「御部屋雛」(明治~大正時代)にも、
野口光彦による「稚児雛十五人揃」(昭和時代初期)にも、
東京日本橋の豪商でコレクターの天野家雛段(大正時代~昭和時代)にも、
犬筥はあった。
だが、東玉大正館で展示してあった「木目込人形十五人揃」(昭和中期)には、ない。
東玉大正館
https://www.city.saitama.lg.jp/004/005/006/001/016/p005876.html
私が持っている雛段は、高度成長期に流行った典型的な7段飾りだけど、やはり犬筥はない。
一方、左近の桜と右近の橘はある。
このようなセット売りは、デパートが発案したものとされている。
そのときに採用されたか否かが分岐点になり、
このセットが多く流通する中で、犬筥はなくなってしまったのかもしれない。
流行から外れ、いつのまにか忘れられそうになっているこの犬筥、
華やかな吉祥文様が縁起がよく、
よく見ると表情もいろいろで、かわいい。
友人は、犬筥ばかりコレクションしている。
天野家の犬筥
久保佐四郎による犬筥、こんな小さなミニチュアにも。
野口光彦による稚児雛の犬筥。
人形博物館の目玉、西澤笛畝コレクションの犬筥、は今回は展示されず。
だが、小さいのは単体で展示されていた。
それでうちでは、犬筥がない代わりに犬筥の屏風を作って飾ったのだ。
詳しい話はこちら。