3番線ホームの謎と団体臨時列車 相撲列車とサンタ電車 ― 両国の旅(続)

先日、両国の旅について投稿をしたあと、ちょっと気になったことがいくつかあった。

デザインマンホールに登場する「ハッキヨイ!せきトリくん」とはいったい?

調べると、日本相撲協会のキャラクターらしい。

巡業レポートをしたり相撲部屋を訪問したりしている。

日本相撲協会TOP  > ハッキヨイ!せきトリくん

まんがもある。ひよの山という新弟子が、上京し初土俵を経て勝ったり負けたりする成長物語。
相撲用語の解説もあって、おもしろい。

ちょっとといいつつ、全436話読んでしまった。

まんがハッキョイ!せきトリくん
https://www.sumo.or.jp/SekitorikunComic/index

その中に、気になるセリフが。

「昔は、相撲列車なんてのも、あったんだぞ。」と先輩力士が主人公の新人力士に言う。

欄外の解説には

「巡業などで力士の移動のために仕立てられる臨時列車の事。現在でも全車両を貸し切りにする場合にいう。」

とある。(88話

なに! もしや、これが、両国駅の3番線ホームの謎では・・・?


先日の投稿で、

両国駅の3番線臨時ホームについて、これは何のためのホームか詳細不明と書いた。
投稿後、気になったことの2つ目がこれだった。

あのホームは、その「相撲列車」の発着に使われているのではないか?

お相撲さんたちが両国に集合して、どやどやと電車に乗り込んで全国に巡業にいく、考えるだけでも楽しい。

昨年末私は、サンタの扮装で列車を貸し切って仕立てた「サンタ電車」に乗った。

その日、14時43分三軒茶屋発の東急世田谷線はサンタクロースで満載で、
目に鮮やかな赤と白の衣装に、
街ゆく人は驚くやら、手を振るやら、非日常の出現に笑いだす人も。

それの力士版だ。そりゃ、壮観だろうなあ。


さて、とにもかくにも「相撲列車」なるものがあるのがわかった。

本があった。『大相撲と鉄道 きっぷも座席も行司が仕切る!?』(交通新聞社 2021年)

https://www.kotsu.co.jp/products/details/601158.html
現役行司の書いたこの本で、はたして、両国駅の謎は解決するのか?

頁を開くとさっそくあった「第一章 相撲列車は、こんな列車だ」

相撲列車について詳しく書いてある(P.31~)。
各鉄道会社の規則規定にのっとり、日本相撲協会が団体券を使って利用する団体列車で、
全車両を貸切る団体臨時列車や一部貸切も含む・・・といってよさそう。本当はもっと細かい。

読み進めると、ついにあった、両国駅の3番線ホーム。

「(前略)1・2番線のホームが総武線各駅停車、
3番線が自転車&サイクリスト専用のB.B.BASEなど臨時列車の発着ホームとして
使用されています」と、駅長が教えてくれました。(P.176

もともと、両国駅は旅客、貨物ともに輸送の拠点として巨大な駅だったが、時代とともに縮小し、
3番線ホームは、平成22年、新聞輸送列車を最後に、定期列車の発着はなくなったとある。(P.185)

※B.B.BASEは、両国駅と千葉県房総半島を結ぶ、自転車を解体せずに持ち込める列車
正式名称「BOSO BICYCLE BASE」

私は、大阪、名古屋、福岡へあるいは地方巡業に行くのに、
両国から相撲列車を仕立て、総武線の線路を使って
東京駅までみんなで乗っていったのかなと思っていたのだが、
3番線ホームが相撲列車に使われたかどうかについては言及がなかった。
現在、相撲列車としては、年6本の東京発着の新幹線のほか、地方巡業でいくつか、とある。

部屋も各地にあるから、両国に集まらないで、東京駅集合なのかもしれない。

だから、3番線ホームへ向かうあの赤いカーペットについても謎のままだ。


余談だが、団体列車について、わかったことがある。

JRによる団体の種別中に、相撲協会団体と並んで遺族団体という表記がある。

団体<普通団体<特殊取扱団体<特殊団体<自衛隊団体、在日米軍団体、相撲協会団体、
新規学卒就職団体、遺族団体(P.114の表より)

亡くなった私の祖父は某県日本遺族会の会長を務めていて、
駅長と相談しにいった、とよく母が話していたが、
そういうことだったかと得心がいった。

著者の木村銀次郎さんのように、手配に奔走していたのだろう。

子ども時代は知らなかった祖父の仕事ぶりを、この本によって垣間見ることができた。


昨年末、サンタの扮装で列車を貸し切って仕立てた「サンタ電車」に乗り込んだが、
あれがつまり団体臨時列車だったわけだ。

実際に乗った側として思ったことを書こう。

世田谷線は、三軒茶屋駅と下高井戸駅を結ぶ東急線の鉄道。
サンタ電車は、さっきのJRの規定で言うと「団体臨時列車」ということになる。
同一団体が、全車両ごと貸切って、通常ダイヤ以外に運行する列車である。
貸切にかかる費用は、みんなで出し合えば十分可能な額。

もちろん、何でも貸し切れるわけではないが、
代表者によるとチャリティ活動ということで可能になったそうだ。

三茶駅前で募金を呼び掛けている様子。

通常、三茶駅の、西太子堂方向向かって左側が、乗るホーム。

だけど、臨時列車なので、特別に右の扉が開き、右のホームから乗るように指示された。

というのも、普通のお客さんが間違って乗っちゃうといけないから。

団体利用なので、SUICAもきっぷも使わない。これも相撲列車と同じ。


いよいよ入線してきた、招き猫のラッピング列車を用意してくれたというのがうれしい。


通常の時刻表では、下高井戸方面へは、14:42 の次は14:48発。
その間の14:43に我々の団体臨時列車は発車するダイヤになっていた。

さあ、出発だ。サンタたちは、次々に乗り込んでいく。

向かいのホームのお客さんたちは、
サンタだらけの2両の列車が停車しているものだから、目を丸くして見ている。

それへ私たちは車窓越しににこやかに手を振る。

列車は、三軒茶屋駅を発車し、終点の下高井戸駅まで行き、三茶まで戻る。

この往復の間、扉はいっさい開かず、運行する。

やはり普通のお客さんが間違って乗っちゃうといけないからね。

それで、途中駅では、扉は開かないが、停車はする。
乗ろうとホームで待っているお客さんは、

突如、サンタで満載の列車が到着して一瞬、戸惑う。

ベンチに座っていたおばあちゃんが笑いどおしなので、私たちも大いにうれしい。

東急線の線路上で作業している職員さんも手を振ってくれる。
私たちは歌を歌ったり鈴を振ったりする。

およそ14:43~15:24の1時間、サンタ電車は、非日常を提供した。

団臨の相撲列車も、たぶん、こんなふうじゃないかと思う。

駅では停車はしても扉は開かず、ホームの人を驚かし、笑顔で手を振って。


ほんとのおまけのおまけ。

『やっぱり猫が好き』で、相撲部屋が恩田3姉妹の家の上階に引っ越してきた、という話がある。

相撲部屋の名前は「トリカゴ部屋」で、登場する若い力士の四股名は「若雀」。

「せきトリくん」と聞いたときに、あれを思い出したが、関取と鳥のダジャレなんだね。

「やっぱり猫が好きVol.8」(ポニーキャニオン)
https://www.ponycanyon.co.jp/visual/PCBC000050249