アゲハチョウの幼虫を育ててみることにした(10 完)

アゲハチョウの幼虫を育ててみることにした(9)

続き。ここ数日忙しくて、とうに放していたのに、書いていなかった。

実は、羽化した当日、寝てると思ってそっとしておいたが、1時間ぐらいして、そっと覗いてみると、こんなふうに羽根を広げていた。

あれ、と思ってみていると、歩いて移動しはじめた。
よく見てみようと、部屋の電気をつけると、急にバタバタと羽ばたき、活動的に。
箱の縁辺りでバタバタしている。

あ、こりゃ、外に出たがっているな。

そう思い、もう夕方だったが、放そうと決意した。
今夜半より大雨との予報で、明朝やみしだい放そうと思ってたが、
朝から用事で出かけねばならぬので、背に腹はと思い放蝶は家人に頼もうと思っていた。
今のほうがいろいろ都合がよかった。

夏至から一夜あけた夕方18時半、まだ外は明るかった。
箱を裏庭に持ち出し、アゲちゃんが生まれ育った山椒の木のそばまで持って行った。

アクリルのフタごしに見えるアゲちゃん。バタバタとしている。

フタを開けると、もぞっと足で箱を抜け出て、白い空にむかって、東のほうへ飛び去った。

あっというまだった。

巣立ちってこんな感じかと感激した。

その姿は立派に蝶だった。

 

夏至の夜は、魔法が強くかかるという。
アゲちゃんが飛んで行ったのも、そんな雰囲気が残るゆうべだった。
しばらくすると夕闇がやってきて、雨が降り始めた。
夜半、雨は強くなり、どこか雨宿りしてくれていればいいのだがと思った。

家に戻り、薄く作ったはちみつ水を、アゲちゃんが結局飲まなかったので、私がおいしくチュッといただきました。

 


アゲハチョウは、普段はひらひらと速く、予測がつかない動きをするので写真どころか動画も撮れない。
腹が白いことや、羽根がおもてうらで模様がまったく違うなんてことも知らなかった。
飼育することで、アゲハチョウについてよく知ることができた。
常日頃、めんどうだ、めんどうだとばかり言っている私にしては、ちゃんと育て上げて、自分でもちょっとおどろいている。

といって、簡単だったかというと、そうでもなく、今回はビギナーズラックだったと思っている。
調べてみると、外で飼うと面倒はないけど、病気や天敵にやられることがあるから、
成功率を上げるには5齢まで待たず、早めに家にいれたほうがよさそうだった。
サナギになってどこかにいってしまうことだってあるから、家にひきとったタイミングもよかったし、蛹から寄生虫が出てくることがあると戦々恐々としていたが、上手に蛹になってくれた。
羽化の際も、窓がわりにつけたラップ部分に足を滑らせてどうなるかと思ったが、
段ボールの壁は意外に足が引っかかるようで、枝状の棒はなくても羽化するスペースが取れたので、それもうまくいったことだった。
何より、羽化の瞬間に立ちあえてうれしかった。

今後は飼う予定はないので、飼育箱はすでに解体し、次に見つけたらすみやかに近くの柚子の木に移そうと思っているが、その後も、柑橘系の街路樹を見かけるたびに、かじられた痕がないか、どこかにアゲちゃんがいないか、探してしまう。

はげちょろけの山椒も数日たつと新芽がそこここに出て、元気よくやっている。


と、じわじわとアゲちゃんのいない暮らしに慣れてきた1週間後、庭に出ていたら、
なんとアゲハチョウが、ゆっくり私の背のほうからゆらゆらと飛んできて、
もう少しで肩にとまりそうなほど接近していた。

アゲちゃんなの?

元気な姿を見せに来てくれたのかと、またまた感動する。

蝶の恩返し、あるかもしれぬ。
絶対に見ないでくださいといって、ほっそりした白い服の美女だか紳士だかがある夜、戸をたたいたら・・・!
ぜひ、背に乗せてひとっ飛びさせてもらいたい。


2024年
5月31日 3齢と思われる黒い幼虫を発見する
6月3日 5齢になる
6月6日 臭角を観察する
6月11日 家に引き取る ワンダリングを観察する 
6月12日 朝、前蛹になる 夕方、蛹になる
6月22日 16時半、羽化する 18時半、放蝶する