羽化したーーーーーー!!!!!
いきなり羽化した。
そうとは聞いていたが
ほんとうに急にあっというまに羽化した。
成功!成功!成功!うちのアゲちゃんはよくやった! WE DID IT!
まず、今日の動きを振り返ろう。
昨日までは変わらず緑色のサナギだったアゲちゃんは、今朝9時ごろ、うっすらと黒ずんでいた。色が深緑になってきたというか。
いよいよか、とも、これが病気だったら、とも思う。期待と心配。ぬか喜びしたくない気持ち。
それから30分ほどすると、いよいよ、羽化の前兆とされている、黒く変色していた。
これはいよいよだと思う。そうなると、もう今日だ。
今日はいちにち、飼育箱から離れないぞと思う。
というのも、サナギから出て羽をひろげるのは、あっという間のことらしいのだ。
ちょっと目を離したすきに、羽化してた、というのはよくあることらしい。
といっても、それから6時間待った、とかとも聞くので、すぐってわけでもないから、とにかく目を離さないようにと思う。
いよいよ、羽根の色が透けて見えてきた。頭の部分も透けている。
体も透けてきた。緑だった腹も、黄色くなってきた。
昼ぐらいは、20分おきにタイマーをならして見ていたが、
3時もすぎると、動きもないので、目の前に箱をおいてスマホを見たりしていた。
と、少し気が緩んでいたころのことだった、バリバリっと乾いた音がした。
すわ、一大事!
あわてて、立ち上がって箱の中を見ると、アゲちゃんがぼとっと床におちて、もぞもぞしている。スマホで動画を撮るのもあるから、焦る。
あっというまにサナギのフタをあけて、寝袋からすすすーっと出て行ったようだ。
それで落ちて、羽根を広げるのにちょうどいい場所を探すのに手間取っている。
飼育箱のラップの部分が滑るのか、足場が良くないようだ。
割り箸をそばにおいてやろうと画策しているうちに、
段ボールの壁に落ち着いた模様。
がんばれ、がんばれ。思わず声を出して応援する。
くちゃくちゃだった羽根をゆっくりと広げる。
ハエの親玉か峨のようだったのが、蝶っぽくなってきた。
羽根を広げるのと同時に、口吻を呼吸をするように口から出している。
丸い輪が大きく、小さく、大きく、小さく。
羽根も広げて、閉じて、広げて、閉じて。
ついに、羽根の全容があきらかになった。
羽根は白地に黒い線が走り、ブルーと所どころ琥珀色のような朱色が入っている。まさに、アールヌーボー。
体はすっかり白い。黒い線がすっと一本はいっていて、あれが、サナギのときに背中に見えていた線かと思うと感慨深い。こんな白い体だったんだね、君は。
目は黒く、顔と胸は白く、細い黒い足がすらりと伸びている。
白と黒がくっきりとして全体に貴婦人のよう。
羽根を広げたり閉じたりして、背中からも羽根を見せてくれる。
背中から見る羽根とは、デザインが少し異なる。
黒い線は太くなって、こちらは色がない。
つまり、表と裏が同じ幅の、切り絵のようではない、ということだ。
影絵を裏からみているようだ。
羽根をゆったりと広げて壁に休んでいる。
ああ、君はなんて美しいんだ。
ちょっと泣きそうになる。
君はうちの山椒を食べて、こんなに立派に育ったんだね。
羽化がはじまったのが、4時20分。
そして、5時。
すぐにひらひら飛ぶのかと思ったが、そのまま羽根を閉じて、静かにしている。
どうした、羽化が上手くいっていないのか、羽根が傷ついているのか。
あわてて調べると、夕方からは蝶は寝るらしい。
放してもそのへんで寝ているだけらしいので、
すぐに放蝶するつもりだったが、今夜一晩は、うちで休ませることにする。
暗いところに飼育箱をそっと置いておく。
いちおう、はちみつを溶いた水を置いておいた。
人の手を貸してやって給餌する方法はあるらしいのだが、
なにぶんにも慣れていない者がよけいなことをして傷つけてはと、そのままそっとしておくことにする。最後までなにかと心配が尽きない。
とにかく、WE DID IT! Excellent! といっていいのではないか。
抜け殻になったサナギ。このサナギ自体の色で白い腹が黄色く見えていたのかとわかる。