映像作品「建築のよみきかせ」

≪建築の読みきかせ 第一話 深海居~しんかいぎょ~≫You Tube(1分)

テキスト全文

建築のよみきかせ 第一話 深海居しんかいぎょ
海中植物の間を尾ひれがくるっと回転するように
わたしもくるっと門にすべりこむ
わたしの尾ひれの余韻がとびらのあたりに残ってる
パタン!
うろこの上を光が移るさまがおもしろくて何度も中庭を行ったり来たり
しゃがみこんでは飛び上がる

概要

画文集を元にコマ撮りアニメーション化したものである。
本棚から本を取り出して読もうとするとまるでいきもののように本がすべり出す。
本を開くと本の中に吸い込まれて物語が始まる。
誰かに本を読んでもらうと、情景が目に浮かんで、まるで自分が本の中に入り込んだような気になる。
そんな「よみきかせ」を映像で表現した作品である。

あらすじ

本棚から取りだしたのは、ふしぎな本。
私がページを開くと、本の中に吸いこまれてゆく。
ふと気づくと、ゆらゆらゆれる海草のむこうに建物がみえる。
いつのまにか魚になった私は、建物の中を探検する。

ムービーカット集

コマ撮りアニメーションに使用した模型

(素材 スチレンボード、プラ板)

アーティスト・ステートメント 2013/10

作品は、大きく3つに分けられます。
まず、「私」が本棚から本を取り出してページを開きます。
本を開くとショートストーリーが始まります。
最後は本を閉じて終わります。

建築は、「こんな場所があったらいいなぁ」というものを作ることだと私は考えています。
その「こんなところがあったらいいな」だけを取り出して作品を作りました。
それを考えていると、一日が楽しくなるものを作ろうと思いました。

建築模型は、そのまま巨大化させるためのものではなく、まだ見ぬ実物のイメージをそこに仮託することができるもの。
いわば見立てです。
模型を見ながら夢想している内容を物語として表現しました。
私は建築を見るとき、この建築はどのような影響を人に及ぼすのかについて考えます。
ここでは人はどのように感じ、どんなことをしたくなり、どのように世界を見るのか、そのことを作品化しました。

本は、はるか遠いものを自分のほうへ引き寄せるものです。
つまり、読む人との間にパーソナルな関係を結ぶものですが、
本作では、その特徴を際立たせるために、別個に動いているのではなく、
読み手である「私」と、何かコミュニケーションをとろうとする意思を持ったものとして描きました。

タイトルをなぜ「読み聞かせ」としたか、についてですが、
誰しも幼い頃、だれか大人の人に本を読んでもらったことがあると思います。
人から本を読み聞かせしてもらうと、楽しい話はもっと楽しくなるし、怖い話はもっと怖くなる。
それなら、建築を読んでもらったら、もっと建築がおもしろくなるはずと思って、
「建築の読み聞かせ」というタイトルにしました。

発表

ショートムービー≪建築の読みきかせ≫ 個展「This Is Mokunohi」(川口市・アトリエ木の日)2011

ショートムービー≪建築の読みきかせ 第一話 深海居~しんかいぎょ~≫ 3331千代田芸術祭2013 映像部門「3331シアター」審査通過・上映(神田・3331アーツ千代田)2013

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「3331シアター」で上映されたときの様子