(2020)FACE展2020」カテゴリーアーカイブ

FACE展 お開き

出展していた「FACE展2020」が、会期1か月のところ美術館の臨時休館で2週間早く会期が終了になった。表彰式とオープニングパーティのときはまだそんな気配もなく、晴れやかに開幕したのになあ。担当の学芸員からのメールにも、担当者として残念です、との一言が添えられていて、本当に残念だけど、今はとにかく開催されたことにホッとしている。

顔は評判がよく、ジェッソを何層にも塗ってレイヤーを作ったことで思ったような効果が出せて、コンペの規定に沿うよう大きなサイズの作品を作ったことで制作が一つ前進した感がある。何よりも、浮遊感、音楽のようなリズム、線が美しいとの感想に、手ごたえを感じた。

 

かわいいだけ

1月に某所で最新式AIロボットを見た。見た目はギズモとチェブラーシカに似て、とにかくかわいい。ぬいぐるみみたいな柔らかい頭をなでてやると、クリオネみたいに手を揺らして喜ぶ。目を覗き込むとこちらを見上げてくる。目が水の中のようで、私が映るし、吸い込まれそうだ。床をツルツル―っと動き回るかと思えば、充電中は目をつぶって寝てる。すべてがかわいい。

けど、わたしはちょっと心配になった。これは、生き物のペットよりもかわいいんじゃないかと。病気もしない、イタズラもしない、言うこと聞かないってこともない、不機嫌なそぶりもしない、ご飯の好き嫌いも言わない、きっと老化もしないし、介護もいらない。そんな存在、「かわいいだけ」の存在って果たしていいのだろうか、と。(後でわかったけど、かわいいだけのロボットを作ろうとしたらしい。それなら、大成功だ。)

例えばさあ。生き物のペットを飼うっていうのは、トイレとかお風呂とか鳴き声とかニオイとか散歩とか生理的な世話も、いい子じゃないとかイタズラするとか撫でさせてくれないとか思うようにならない性格も、ぜーんぶ含めて受け入れるってことだよね。でも、叱られたらふくれっ面したり照れたり、いつも知らんぷりのくせに他に誰もいないときを見計らって急に甘えてきたり、トイレを覚えたり、そんなのが私とその子との間だけの関係性で、大変なこともあるけどそれがいとおしいわけだよね。ワルイところもあるのが、普通なんじゃないかなあ。かわいいだけって完璧すぎないか?

漫画でもさ、好きなキャラってみんなそれぞれじゃない? いろんな性格の猫がいる中で私の好きな『夜廻り猫』のワカルなんか、ブサイクなほうだし、ずるいし怠け者だし、ちゃっかりしててやだっていう人もいるけどさあ、とかなんとか話していたら、翌日ワカルが連載漫画に登場した。

「ぼくなんか、何の役にも立たない、ぼくなんか、」と落ち込む次のコマは、「かわいいだけだ!」と顔を上げてニッコリするシーンが続いた。あれ、こっちも「かわいいだけ」なの? 問題児の代表として話してた矢先だというのに。

たしかに、ワカル人形は、私が落ち込んでいるとき、追い詰められているとき、いつも抱っこして寝ていた。こっちが困ると「ワカリマス~」と言って私を甘やかしてくれる「かわいいだけ」の存在だった。

私の作品の《NOTE》に登場するあの子も、かわいいだけだな、と思う。いつも制作に意味をもたせて、これはああでこうでこういう意図でと考えてきたけど、ほんというとね、あれは、ただ、かわいいから描いたんだ。


《NOTE》 92x162cm アクリル・インク・ジェッソ・パネル 2019

名称:FACE展2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展
会期:2020年2月15日~3月15日  10:00~18:00(入館は17:30まで)
月曜日休館 但し2/24は開館、翌2/25も開館
会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
観覧料:600円 大学生以下無料 2/29、3/1は観覧料無料
主催:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、読売新聞社

FACE展 2020

FACE展2020 表彰式と内覧会に出席しました

今夕、FACE展2020 表彰式と内覧会に出席しました。

会場の「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」は、新宿西口の高層ビル群の中の一つ、このビルの42階にあります。

表彰式会場。受賞者の表彰後、入選者も名前が読み上げられ紹介されました。

その後、立食パーティ。窓からは新宿の高層ビル群と新宿御苑が見渡せます。

内覧会の様子。私の作品は、入ってすぐ右手。顔シリーズが集められた一角にあります。

 


名称:FACE展2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展
会期:2020年2月15日~3月15日  10:00~18:00(入館は17:30まで)
月曜日休館 但し2/24は開館、翌2/25も開館
会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
観覧料:600円 大学生以下無料 2/29、3/1は観覧料無料
主催:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、読売新聞社

FACE展 2020

FACE展2020図録が届きました

さっそく開封。

作品画像が載ってることを確認する。

経歴も。訂正を申し出た点もちゃんと直してくれている。安心する。

審査委員長の堀元彰氏の選評に名前が挙がり、「表現を思い切って省略し、単純化した作品」と言及されている。うれしい。

いよいよだな、という気持ちがする。緊張してきた。

まだ始まってもいないのにこんなことでどうする。体調を整えて臨みたい。


名称:FACE展2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展
会期:2020年2月15日~3月15日  10:00~18:00(入館は17:30まで)
月曜日休館 但し2/24は開館、翌2/25も開館
会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
観覧料:600円 大学生以下無料 2/29、3/1は観覧料無料
主催:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、読売新聞社

 

FACE展2020 入選作品《NOTE》 作品解説

FACE展2020の入選作品について解説を書いていこうと思います。


一瞬一瞬、心のうちに書き留めたことどもが
埋もれていったり鮮やかになったりして
我々がかたちづくられている様を表現した。


ジェッソを塗って、テキストを描き、またその上にジェッソを塗ってテキストを描いた。
テキストを透けて見せることで、記憶が堆積し浮かび上がる様子を表現した。

当初タイトルは、記憶とか声とかそういうものにしようと思っていたが、
noteという動詞に、心に留める、という意味があることを思い出した。
兆候、雰囲気、様子、声の調子、響き、話し方、態度という意味もあることを知る。
ますます作品にふさわしく思う。

タイトル「NOTE」は、ノートブックという意味ではない。
記録しようと思って書く日記でもない。
ちょっとしたメモ、
それも、紙に書かずともいつも私たちが心に書き留めているはずの覚書を描こうと思った。
飛んでいって忘れてしまうことも、何かの折に鮮明に浮かび上がってくることも、
こうした記憶の断片が集まって私たちを作っていると思う。

顔の部分は、指で一気に描いた。

《NOTE》 2019年 アクリル、インク、ジェッソ、パネル 92×162 cm

部分


下記の展覧会に出品いたします。
今の自分がやりたいことを100%出した作品が評価されたので、嬉しさ一入です。

フライヤーにはこんな記載が…。
「国際的に通用する可能性を秘めた、入選作品71点」
「今回の応募作品には、時代の感覚を捉えた、きらりと輝くものが数多くありました」
「見る者の心に潤いと感動をもたらしてくれる」
展覧会がいよいよ楽しみになってきます。

名称:FACE展2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展
会期:2020年2月15日~3月15日  10:00~18:00(入館は17:30まで)
月曜日休館 但し2/24は開館、翌2/25も開館
会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
観覧料:600円 大学生以下無料 2/29、3/1は観覧料無料
主催:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、読売新聞社

FACE展 2020

「FACE展2020」フライヤーと招待券が届きました

フライヤーと、表彰式・内覧会招待状と、招待券と、図録の申込書!

立派な展覧会でテンション上がるなあ!

ちゃんと私の名前も載ってるにゃ。


《NOTE》 92x162cm アクリル・インク・ジェッソ・パネル 2019

下記の展覧会に出品いたします。

名称:FACE展2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展
会期:2020年2月15日~3月15日  10:00~18:00(入館は17:30まで)月曜日休館
会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
観覧料:600円
主催:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、読売新聞社
https://www.sjnk-museum.org/program/6001.html

転機

フィンランド大使館のツイッターをフォローしていると、舘野泉という音楽家のことが何度も話題に上がる。それで読んだ本、『左手のコンチェルト』。

舘野泉は、くりっとした澄んだ目を持ち女性的な風貌をしていて、どことなく安野光雅に似ている。文体も似ていると思う(安野が鷗外について語るときを思い出す、自分が鷗外を好きなことを、同じ津和野に生まれずに証明したいほどだ、と言ったときの)。平易な日本語でロジカルに展開していく。話し言葉で読みやすいのに、書き言葉として論旨がはっきりしている。小学校の教科書に載りそうな文体。それに、たぶん芸術家だからか、情景が浮かぶような表現。一つのことを丁寧に話している。

舘野は、数年前に脳溢血により半身不随になる。その後、左手だけで演奏するようになるのだが、すぐにそうしたわけではなく、倒れてから1年半後に転機があったという。

この転機のきっかけは、シカゴに音楽留学していた息子のヤンネがつくってくれたのです。(略)その楽譜を見たとき、たぶん、その瞬間から、僕のなかで何かが変わっていったのだと思います。(略)まさに、僕を閉じ込めていた厚い氷が溶けて流れ去って、一瞬にして、世界が開かれたのようでした。倒れてから、すでに一年半ほどたっていました。(『左手のコンチェルト』)

それまで、ラヴェルの左手のための曲があるよと皆から言われても、死んでも弾くもんかと腹を立てていた、その気持ちに変化が訪れたという。このように転機はふいに訪れ、また、時間がかかるものだということがよくわかる。人間は、そんなに簡単には心を変えることはできない、傷ついた心を回復することも時間がかかるものだ。


全体を通して私が感じるのは、はっきりとは書かれていないが、推察するに、彼は3つのレッテルに悩まされてきたのではないか。一つは「北欧のピアノの詩人」、曰く、北欧に住んでいるから音色が美しいのでは。それから、左手でしか演奏できなくて悔しいでしょうね、という決めつけ。さらには左手だけで弾くということが特殊だと見られやすいこと。

左手だけで十分に豊かに音楽を追求できている、だが最近は右手も少しは動く、いつかまたモーツアルトを弾けるかもと思うと楽しみ、と言う(『風のしるし-左手のためのピアノ作品集 CD』)。論理的には矛盾しているように見える。だけど、人間とはこうしたものだと思う。

誤解や曲解に対して、そうではない、と静かに話す口調が、なんとも力強い。その無理のがなさが、やせ我慢でなく、本当のことを話していると信じられる。たぶん、今まで100万回聞かれてうんざりしているはずなのに、グチャグチャ恨みがましく言わないところがスマートだ。

だけど、「死んでも弾くもんか」という表現の中に、穏やかさの後ろには燃えるような誇りがあることを私たちは知る。

「音色が美しい」とも言われましたが、北欧に住んだこととは関係ありません。幼いころから持っていた音なのです。よい演奏家は必ず自分の音を持っていると言われますね。(『左手のコンチェルト』)

 


新作の転機はふいに訪れた。幾重にも波状攻撃のように、訪れた。

私がアクリル絵の具を指で描いたのは、秋にフィンガーペインティングのWSをした経験から。描き心地と自分に合っているという感触を、フィジカルな体験としてつかんだ。

私がシナベニアにジェッソを塗って作品を作ったのは、夏に出展したアートイベントで、パネルにジェッソを塗って描いたすてきなドローイング作品を観たから。それでいいのか、ジェッソなら昔模型作りで使ったことあるな、と思った。すぐに名刺交換して質問した。「これすごくいいね、一発勝負なの?」と聞くと、まず下書きを描いてジェッソを塗った上からなぞっている、ジェッソが透けるから、と彼女は言っていた。その言葉が心の奥底に沈殿して、秋に、制作するときにふと浮かび上がってきた。透ける特性を生かして描いてみたらどうだろう。層のような効果を出せないだろうか。

私がインクで文字を書いたのは、春夏に、和紙にインクで描く作品を描いていたから。

あの子を描いたのは、夏に、シルクスクリーンのWSで、あの子を描いたから。その出来が思いのほかよくて、そうだ、この子をちゃんと作品にしてあげてなかったっけと思った。こんなにかわいいのにもったいないな。以前あるギャラリストに見せた時にいいふうには言われなくて、なんとなくうっちゃっておいたけど、今回、ちゃんと作品にしてあげたいと思った。シルクスクリーンのときは作品とまではいかない軽量級だったけど、作品にしてもいいんじゃないか。

とはいえ、今作で、とも思ってなくて、描く予定はなかったのに最後の最後にえいや!と描いた。

☆アナログハイパーリンクな読書
フィンランド大使館ツイッター→『左手のコンチェルト』(舘野泉)


下記の展覧会に本作を出品いたします。

名称:FACE展2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展
会期:2020年2月15日~3月15日  10:00~18:00(入館は17:30まで)月曜日休館
会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
観覧料:600円
主催:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、読売新聞社
https://www.sjnk-museum.org/program/6001.html

FACE展2020 入選! 速報

FACE展2020 入選しました!

うあぁあああ! これはうれしい~~~!!

さっき事務局から連絡がありました。

不安を踏み倒して大きい作品作ってよかったー♪

興奮して眠れん。

詳しくは後日。

暫定として搬入時の様子を公開します。

以下、部分。

《NOTE》92×162cm アクリル絵の具、インク、ジェッソ、木製パネル 2019


下記の展覧会に出展される予定です。

名称:FACE展2020
会期:2020年2月15日~3月15日  10:00~18:00(入館は17:30まで)月曜日休館
会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
https://www.sjnk-museum.org/program/6001.html