ずっと終わらなければいいのにと思う本のこと

岩波書店でトークイベントがあった帰り道、もう閉店して半分暗くなった本屋さんのウインドウに並べてある当店人気ベスト10の中で、これはちょっとへんだなと思ったのがこの本。他の本は今なら全国どこでも評判なんだろうなと思う本だったから別に目新しくもないと思ったけど、この本だけは作者も本そのものも全然「旬」じゃない。ということは、この界隈に関係があるのか? 神保町とか出版社が多数あったり大学がたくさんある街に? たとえば日暮里駅の本屋ナンバー1として『「谷根千」の冒険』が平積みにしてあるようなもの? それならこういうのこそ読みたいなと思って、手に取った本。

ところが、土地柄とはまったく関係がなかった。たしかにこだわりのコーヒーを出す店はたくさんあるだろうけど、喫茶店の話でもない。古そうだと思ったら50年前の新聞連載。なんで、あの店のトップ10に入っていたんだろう。

けど、いい本だよ。もっと読みたいなと思う。中毒になる感じ。『細雪』みたい。ずっとずっと雪子がお見合いすればいいのに、モエ子がコーヒー入れたり女優やったりしてればいいのにと思う。続編『コーヒーと恋愛2・3・4』があるような気がしたのは、本当に気のせいみたいだ。

ラストシーン、何か踏ん切りがつくときというのは、こういうもんだよなと思う。励まされてヨシと思うときもあれば、ナニィィィィと思って奮起することもある。何が役に立つかわからない。それまでなんでもなかった一言になんだとぉぉぉと思って自立する箇所は、なんだかスカッとした。

☆今日のアナログハイパーリンクな読書
岩波書店→獅子文六『コーヒーと恋愛』