2019/10/22

宝箱

レオ・レオニの技法についてWSをしたとき、「そういえば、みんなはこの材料、どうやってさがしたの?」と聞いてみた。

スタンプになりそうなもの、というのは子どもには難しい設問だと思ったから。

えぇっとね、家の中をウロウロしてたまたま見つけたの? それとも、あれがイケソウとまず思いついてから探しに行ったの?

すると一人の子が、自分は工作を趣味にしていて、材料になりそうなものをいつも集めている箱があって、その中から見繕った、という。

ナニソレ楽しい箱! 他の人には価値がわからないけど、これからすごいものになると自分だけは確信を持っている箱だ。自分がこれからすごいものを作り出すための原石たち。

宝箱だね、とわたしが言うと、彼女は、え、あ、うん、と照れる。わたしの宝箱はあれだよ、と、自分のアトリエの棚を指さす、使ったものとか使ってるものとか有象無象がごちゃごちゃとキチャナク置いてある。うふふふと二人で笑い合う。宝箱連盟。


子どもの頃、宝箱には拾ったものを入れていた。貝殻とかキラキラしたビーズとか。あるとき、公園の砂場で、見たこともないデザインのコインを見つけた。銀色で100円玉より少し大きくて、ピエロの顔が彫ってあった。外国のコインか、いや、魔法の国の貨幣に違いない! ドキドキしながらそっと持ち帰って箱にしまった。たまに開けて手の上に乗せたりしてけっこう長い間、少なくとも外国のだろうと思っていたけど、ずいぶん経ってからゲームセンターのコインだとわかった。夢から覚めた気がしたが、それでも、あのときのドキドキは忘れない。


友人が引っ越すという。彼女は紙を集めるのを趣味にしていて、コラージュ作品を得意としている。前に引っ越した時に、「こんな紙、カビちゃうんだからね!」と危うく家族に捨てられそうになったところを、「ヒャー!捨てないで―!大事なのー!」と追いすがったという。今回の引っ越しでももちろん持っていく。だってコレクションだから。

きれいな紙を集めるなんて、子どもみたいで、子どものままで、そういうところが彼女のすてきなところ。


亡父の書斎に来客があるというので、実家に帰って整理していたところ、「宝」と書いてある木箱があった。封がしてある。古そうだ。

これなに?と妹に聞くと、「これ、パパの。前に開けようと思ったら、急に重たくなって。きっとパパが開けてほしくないんだと思う・・・」妹はわりにそういうことを感じる人だから、それ以来、書斎に置きっぱなしにしておいたという。

私も父と妹を尊重して、そのままにしておこう。宝というネーミングが、なんともいい。そういうものを持っている人生って、なんだかいいものだ。

パパ、ちょっと動かすだけだからね、とつぶやいて、隅のほうに押しやった。

書斎には父の遺影がある。そこから見ているのかもしれない。