札幌AIR報告(6/14)滞在作家

(6)滞在作家
海外の作家の利用も多く、私が滞在中も6:4で海外作家が多かった。注意書、備品の使い方、イベント告知など、すべて日本語と英語が併記されていた。英語を母国語としない人同士が英語で話すという風景が見られ、国内のスタジオなのに国際的な雰囲気があった。

実際に私が経験した滞在作家同士の交流と言えば、展示スペースで展示の準備をしているDさん(アイルランド)の脇の共有スペースにあるピアノを私は毎晩弾いていた。Dさんの展示とトークとレセプションの前には、スタッフから滞在者向けにメールでインフォメーションが届き、そこで初めて他のレジデンシーのHさん(日本)と会った。共有スペースでCさん(韓国)がダンスを披露していた。私が休館日に展示スペースを借りて試験的に展示した際には、Hさん(オーストリア)が「じゃ僕だけがゲストだね」と展示を見にきて、色についてのヒアリングを受けたりした。

なぜ海外作家が多いのかスタッフに聞くと、公募プログラムや派遣されてくる作家のほか、口コミ、利用した知人からの紹介、海外のAIRのポータルサイト数か所に登録しているためそこで知る作家も多いとのこと。さらに、アイヌの文化について研究する海外の作家や研究者が滞在することもあって、当スタジオの特徴と言える。当地は、歴史的にもその昔アイヌと和人が話し合いをした特別な土地で、一種の空白地帯だったようだ。天神山という名前の通り天満宮を祀った山であり、現在も2つの神社と隣接しており、聖地の雰囲気をまとった場所であると思われる。

美術以外のジャンルの作家も滞在しているということも特徴である。私が滞在中も、美術作家以外に舞踏、演劇、文芸というジャンルの作家が滞在していた。

滞在作家の展示とレセプションで、はじめて他のレジデンシーに会った。彼は俳優で、当地での公演のため滞在しているが毎晩稽古に出かけ夜遅くに帰ってくるという。このように外部で活動する作家も、私のように部屋にこもって制作している作家もいて、それぞれが活動しているようだった。スタジオが企画する公募プログラムに参加する場合もあれば、作家本人が企画するAIRとして滞在している場合もある。

2階の滞在スタジオは常に静かで、滞在しているはずの他のレジデンシーに会うことはほとんどなかったが、夏には満室になるらしいので、わいわいした感じかもしれない。
例えば私が昨夏滞在制作した中之条ビエンナーレのように同じイベントを目標に滞在しているわけではなく、それぞれが異なる目的と期間で滞在するので、常に作家が出たり入ったりしている。

スタジオには滞在者が使える展示スペースがあり、そのほかスタジオが契約している小学校の昼休みを使ったアーティストインスクールも可能ということである。
月に1回アート&ブレックファストデイというイベントをスタジオが主催している。だれでも参加できるポットラック形式のパーティで、市民と滞在作家とをつなぐ場になっているようだ。実際、私が参加した展示のトーク&レセプションでも、その会で作家と知りあったという地元の人が来ていた。

☆スタジオの玄関の黒板に書かれた滞在作家の名前 どういう作家がどこから来ているのか訪れた人に知らせるためのインフォメーション 活動先のリーフレットも掲示されている。IMG_0968

☆レジデンシーから色についてのヒアリングを受ける 「何色が好きか、それはどのような意味を感じているか、作品に使ったのはなぜか」など。
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☆展示スペースで準備中のレジデンシーの横でピアノを弾く
夜遅くまで搬入作業をしているレジデンシーに「Would you mind my playing the piano?」と聞くと、もちろん大歓迎とのこと。これが縁で後日、彼女の展示のトークとレセプションに参加した。
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☆スタジオの入り口に黒板があって訪れた市民が楽しそうに落書きをしていた。私も退館する朝ドローイングを描き、置き土産とした。
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