お店で偶然見せてもらったパーカーの「iroshizuku-色彩雫(いろしずく)」という美しい色のインクと、コンバーターも一緒に買いました。無事、万年筆とインクを手に入れ、今しかできないと思うことをテーマに新作を制作しました。
久しぶりにこもって集中した時間を持ちました。2種類作ってみて、どちらがいいんだろうと並べてみましたが、自分ではわかりません。Aがいいと思う日もあれば、Bがいいと思う日もあります。Bの中でもいくつもあるので、その中で一番を決めようとすると、決め手が自分ではわかりませんから、やはりわからないのです。量をたくさん作って並べるのが自分の制作の特徴ですから、その中から一つ選ぶとなるとまったく困ってしまいます。作ったあと、これはいったいどういう作品なのかと考えてタイトルを考えるので、制作の2倍の時間がかかります。さらに、そういう作品とするとこの形式は合ってるのか、と考えるとまったくわけがわからなくなってしまいます。
制作するときは一気にやってしまいますが、できた作品を眺めていると、発表するのがはずかしい気持ちがする一方で、これが描きたいことだと意気上がる気持ちもします。
少しでも新しいこと、ドキドキすることをやっていきたいものです。とはいえ、すぐにほいほいと別の作品ができるわけもなく、ほんの少し、ほんの少し、と進んでいくしかありません。
追い込まれて、やっと出てくる制作は苦しいものです。作品を観ると、楽しそうとよく言われますが、そんなことはありません。楽しくてやることは、ほかにあります。ただ、制作と同じような感覚になるものというのはほかにありませんから、しかたないといえばしかたないとも言えます。
ここで大きな問題が持ちあがる―何を書けばいいのか。(略)書きたいことを書け。(S・キング『書くことについて』)
俵万智が今しか、子どもが小さいうちしか作れない歌だから、と言っていた『プーさんの鼻』。人生のある局面に即した制作をわたしもやっているつもりです。
「生きるとは手を伸ばすこと幼子の指がプーさんの鼻をつかめり」(俵万智)