きょうわたしは「げいじゅつ」をやろうと思った。

ライオンは「てつがく」が気に入っている。
かたつむりが、
ライオンというのは、けものの王で哲学的なようすをしているものだと教えてくれたからだ。
(略)
きょうライオンは「てつがくてき」になろうと思った。
哲学というのはすわりかたから工夫したほうがよいと思われるので、
尾を右にまるめて腹ばいにすわり、まえあしを重ねてそろえた。
(略)
(だれか来てくれるといいな。「なにしてるの?」と聞いたら「てつがくしてるの」って答えるんだ)
(略)

「ああ、なんていいのだろう。ライオン、あんたの哲学は、とても美しくてとてもりっぱ」
「そう?・・・とても・・・何だって? もういちど言ってくれない?」
「うん。とても美しくて、とてもりっぱ」
「そう、ぼくのてつがくは、とても美しくて、とてもりっぱなの?
ありがとう、かたつむり」

そんなふうにわたしも制作をとらえている。
『てつがくのライオン』文・工藤直子 絵・長新太