今回、急に紙に描くことになったのだけど、当初はガラスに描く予定だった。それで、ガラスに描く用に水性マッキーとダーマトグラフを用意していったのだった。
それが偶然、紙に描くことになって、鉛筆も使ったけどダーマトグラフも使った。これが、強く描くとねっとりと紙に吸いつき、弱い力でものびやかでいい感じだ。ずっと同じ鉛筆を使っていると描き心地に飽きてくるので、6B、3B、2B、HB、F、ダーマトグラフ、木炭、と並べながら順々に使った。このラインナップは別にこだわりがあってのことではない、3B、2B、HBは文房具として持っていただけ、6B、F、木炭は事務局にあったのを借りただけ。細くて固いものはそのように、太くて柔らかいものはそのように紙に描かれた。最初は迷いつつ描いていったが、そのうち何も考えずに描いた。
偶然ダーマトグラフを持っていたのだがしかし、この偶然は急に降ってくるような偶然ではない。前になにごとかを意図して、だからこそ生まれるもの、わたしの制作はいつもそんなことだ。前に試しにやったことが今回生きたとか、いつものを少し変えてみたとか。とにかくやってみることだ。無駄なことはない、ちゃんとやれば次はくる。うまくいったかどうかは別として、こうやって少しでも前進していきたいものだ。
今、気づいた、なぜダーマトグラフを持っていったか、半年前の冬観た作品に使われていたからだ。それで、ふぅん、ダーマトグラフか、と思ったんだった。それに、サイ・トゥオンブリーがダーマトグラフのような、たぶんオイルスティックがそれなんだと思うんだけど、赤い文字を描いていたのがよかったから、それは原美の2階の一番奥のギャラリーで展示されていた作品だけど、だいたいTWの作品はほとんど「無題」だから困る、言葉でタイトルを指し示せない、そうだ、ダーマトグラフね、と思ったんだった。それで前回の現地制作の際にも一応持って行っていた。そう考えるとやはり、偶然とは言えない。水中深く沈潜しふとしたときに頭をもたげる。
そういえば、紙に描いたのだって本当は偶然でもないんだ。