2回目の現地制作の周辺から~中之条への道(18)

前回の現地制作の報告の際、あっしまった、写真がない、と思ったのを今回撮ってきた写真も含めて報告する。
前回はコチラ
http://hinakoharaguchi.com/archives/2146
http://hinakoharaguchi.com/archives/2109
http://hinakoharaguchi.com/archives/2094

ちなみにソローについての本というのは、みすず連載中の今福龍太「ヘンリー・ソロー 野生の学舎」である。
事務局で借りた自転車。今回はそんな散歩の余裕はなかった。
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■熊鈴(くますず)
 今回は制作が押して、どうしても夜制作しなければならなかった。8:00スタジオに着き作業開始、17:30いったん入浴のためにレジデンスに戻り、温泉に行ってから戻って20:00制作を再開、22:30ごろレジデンスに戻るという日が2日間あった。まさに突貫工事といった按配だ。同じ時期に伊参スタジオで作業していたTさんは9時から21時まで休みなし、Jさんも熊鈴をちりんと鳴らしながら夜帰ってきたのを見かけた。みんなコツコツやってるんだな、と思った。
 わたしはコスプレ感覚で熊鈴を持って出た。ただ、本当に熊が出たら、と考えたが、まったく想像もつかない。本当に出たら、きっと、いや、うーん、やっぱりわからない。

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■真っ暗な夜道を帰る
 夜制作することについて、わたしはそういうのもいいね、とちょっとウキウキしていた。2日間ぐらいなら無理もできるし、たいしたことはない。ただ、思ったよりも真っ暗で、そのことがびっくりだった。徒歩5分だし、なんとかなるだろうと最初、懐中電灯を持たずに出かけたら、闇で足元どころか何も見えない。泳ぐようにそろりそろりと勘で歩き、レジデンスにいったん戻る破目に。オバケよりもチカンよりも自分が一番コワイ、転んでも助けは来ないぞ。

 遠くに見える赤い明かりは信号ではない、なんと駐在所の明かりだ。左の白い明かりは公衆電話ボックス。学校のそばだからか? その左の奥に旧小学校のレジデンスがあるのだが、真っ暗で見えない。夜の23時ごろ。

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■温泉
 制作は押したが、温泉はマストだ。そもそも温泉好きというのもあるが、制作や滞在で出る心の膿のようなものが流されるような気がするのだ。自分をリセットするために毎日行った。
 レジデンスの受付で毎日名前を書いて温泉チケットを受け取る。入泉料500円のところ、作家は無料、アシスタントは200円。レジデンスからは車で30分程度。往復で2時間かかるので、それよりはと伊参スタジオのお風呂でささっと入浴したりレジデンスのシャワーで済ます作家も。そうそう、伊参スタジオは『眠る男』の撮影拠点で、ロケ場所として今も使われているのでお風呂もキッチンもある。

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 町営温泉は四万川のほとりにあり、温泉旅館が川沿いに軒を連ねているのが見える。中でも積善館は『千と千尋の神隠し』の湯屋のモデルになっている。夜になると四万温泉全体に灯がともって、なんともいい雰囲気だ。あの、映画の、夜になって千尋が両親を探しに行くときのように、時がぐにゃりと曲がるような感じもある。
 四万川は青い色をしている。水自体は透明なのにとても不思議な現象だ。前回は甌穴にも連れて行ってもらったが、近くで見ても青く見えて不思議でならない。

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■レジデンスの食事
 今回は滞在作家が多いので夕食が出た。うれしいな。食材は地元の方やビエンナーレを応援してくれる方からの差し入れも多い。黒板に今日の献立が書いてあって、食べた人はチェックを入れる。家庭科室でみんなで食べていると、部活かなんかで合宿してる気分だ。学校を卒業したのは20年も前だし、みんないい大人なのにね! 今夜は10人が泊まっているらしい。

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■制作中に見ていた風景
 展示会場の伊参スタジオ2階の窓から、こんな景色を眺めながら制作していた。
 木製の窓枠越しの風景。校舎前のサルビアが真っ赤だった。左の青い屋根は向かいの製材所。

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 管理人のSさんが作業している。今回も様子を見に来てくれた。「うわああぁあ、こりゃすごい量だ!」とまっすぐに驚いてくれるので、なんだかうれしい。Sさんは迷惑な顔どころかいつも莞爾として笑っているので、こちらもホームにいるような安心感がある。
 下は、前回紹介したSさんが「仲間」と歓談するときの畑脇の椅子。あの椅子を見るとSさんの様子が思い出され、わたしにとって親しみのある風景だ。

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