これがあれか! 本に出てくるおいしそうな食べ物たち

 小さい頃、本に出てくる食べ物が食べたくてしょうがなかった。今もそう。

 池澤夏樹の『南の島のテオ』と『マシアス・ギリの失脚』で、タロイモが食べたくて食べたくてしょうがなくなった。熱が高じてインパラクラブにまで問い合わせたりして、どうやらモデルになった島はパラオらしいとあたりをつけた。どこにあるのか、どうやって行けばいいのか、真剣に旅程を調べたら、日本からの直行便はなく少なくとも1週間の旅になるらしい。食べたい食べたい、おいしそう。結局行かなかったので、きっと思ってるよりはおいしくはないよと、長い間酸っぱいぶどうだったが、昨日、タロイモのパンケーキの粉を見かけて迷わず買った。わぁ、これでタロイモが食べられるー!!

 ピッピに出てくる黒ソーセージというのも食べてみたいと思った。ピッピが床で型抜きするパンケーキは、母に聞けばホットケーキだというから、これはわかる、と思ったけど、でもちょっと違うんじゃないかなとは思っていた。だって、ホットケーキは型抜きしないからね。で、黒ソーセージは、オッレがピクニックに持ってくるんだった。冷たいものらしい。大人になって、あれはブーダンノワールなんじゃないかと思った。調べると、豚の血を使った、だから黒い、ちょっとクセがある食べ物らしい。大丈夫か? でも後悔してもイイ、ずっとずっと食べたかったあれだ、絶対食べるぞ。フランス料理店で頼んでみた。おいしい!おいしい! もちろん、ずっとあこがれていたものだから、その思いの分おいしい。

 スイッチという出版社のブックカフェでアメリカ小説特集が組まれたときはコーンブレッドが出た。それで、ハックを初めて読んだ。これは逆パターン。

 小5のとき、『風とともに去りぬ』を観たあと母に「ねぇ、大根ある?」と台所で言ってみた。どうするの? かじってみるの。辛いよ。平気平気、だってアタシはスカーレットだもん! 土の中のひねたヤツじゃなくて現代の日本の売り物だからちょっとずるいかなと思ってたのに、ほんの一口でとても辛くて食べられなかった。涙を流しながらスカーレットのひもじさと決意のほどを感じた。

 モノにはこうして思い出とか思い入れとか(奇しくも、出すと入れるだ)があって、それはとても個人的なものだ。モノを見ると、それを自分のものにしたい、自分のものだと言いたい、だからモノ語りしたくなる。blogもそうかもしれないと思った。このところ自分にはあまり欲がない。生きる力が少なくなっているような気がするが、久しぶりに欲を感じて、少しホッとした。

 たまにはメソメソじゃない話もしないとね。

☆今日のアナログハイパーリンクな読書
池澤夏樹『南の島のテオ』と『マシアス・ギリの失脚』・・・リンドグレーン『ピッピ』・・・マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』・・・『風とともに去りぬ』